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『《第1部 狭心症、心筋梗塞にならないために》 講演2 お薬による予防、治療』
狭心症、心筋梗塞予防も
心臓は1日に約10万回も拍動し、全身に血液や栄養分を送り出しています。心臓の根元から冠動脈という血管が走っており、動脈硬化が進み血管が狭くなると、運動中に胸が痛む労作性狭心症や、冠動脈にけいれんが起きる冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症などを起こすことがあります。血管に血の塊ができてしまうと、それが心筋梗塞に発展します。
狭心症はまず、発作の誘因となる過労や精神的ストレス、寒冷、過食を避けることが大切で、禁煙も不可欠です。また生活習慣病にも注意し、高血圧や糖尿病、脂質異常など、動脈硬化の危険因子をコントロールすることが重要です。
高血圧は年齢とともに増加する傾向にあります。循環器外来では、血圧を下げるために体内から水分を出す利尿薬や心臓の働きを適度に抑える薬、末梢の血管を広げる薬などをうまく組み合わせて使い、血圧を管理します。
糖尿病を患っていると、心臓の交感神経の神経繊維に障害が起き、心疾患の発作の痛みを感じなくなることがあります。場合によっては運動の最中に胸痛を感じないまま、狭心症と同様の発作が起こり、倒れてしまうこともある非常に怖い疾患です。
予防のためには、食事制限や運動でコレステロールや中性脂肪の値を抑えることが肝心です。それでも基準値に届かない場合は、医師に相談してください。薬物療法によってコレステロール値を下げることで動脈硬化を抑え、血管の狭窄(きょうさく)の進行を防ぐことができます。
糖尿病は血糖値をコントロールすることも重要です。ことしの日本糖尿病学会では、狭心症や心筋梗塞の合併症を防ぐため、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)を7%以下に保つことを目標に治療を行うことが提唱されました。
狭心症、心筋梗塞の発症を防ぐには、まずは生活習慣の改善が必要ですが、薬による高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療で、狭心症や心筋梗塞を予防することもできます。
今はいろんな治療薬が出ていますから、医師に相談し、適切な薬による治療を受けてください。