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『《第1部 狭心症、心筋梗塞にならないために》 講演1 生活習慣』
心掛けたい減塩と禁煙
狭心症、心筋梗塞の主な危険因子には、喫煙、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病があり、その他にもさまざまな危険因子があります。今回は高血圧と喫煙、歯周病の3点に絞って危険因子としての要点をお話しします。
高血圧の基準は、診察室で測定した収縮期血圧(上)が140mmHg以上、拡張期血圧(下)90mmHg以上ですが、降圧目標を達成できていない高血圧患者は6割に上ります。血圧を下げるには塩分摂取量を抑える必要があります。ちなみに塩分を1日平均9〜12g摂取する日本人に比べ、3g以下しか取らないケニアやパプアニューギニアの人たちは何歳になっても血圧低めの人が多いです。
日本人の食事は、塩分に加え、糖分や脂質の摂取量が多いのが特徴。逆に高血圧の人に食べてほしい野菜や果物、大豆、海藻類が不足しています。これらは余分な塩分を外に出す働きがあるカルシウム、カリウム、マグネシウムを多く含みます。高血圧の人には、食品の組み合わせによって血圧を調節する食事療法「DASH(ダッシュ)食」を取り入れることもお薦めします。
喫煙は、心筋梗塞や脳梗塞のほか、肺がんや食道がんとも因果関係のある危険因子です。高血圧より喫煙の方が、寿命を縮めるリスクが高いのです。また喫煙は老化を早め、晩年に寝たきりになる期間が長くなる傾向があります。
たばこをやめられない方は禁煙外来を利用するとよいでしょう。禁煙してもお酒の席などちょっとしたきっかけで喫煙を再開しやすいので、「私は禁煙しているので絶対吸いません」と酒席で宣言するのも一つの方法だと思います。
歯周病は、歯茎と歯の間に歯垢が入り、そこに歯周病菌が繁殖して発症する病気です。歯周病菌の毒素で歯を支える骨が溶け、歯茎が下がり、やがて歯の根元があらわになって歯茎から出血しやすくなります。歯周病菌の毒素が歯茎の血管の中に入ると動脈硬化を促進し、心臓の弁に菌が付くと手術をしなければならないことがあります。
40歳代になると進行した歯周病を持っている可能性もあるため、ぜひ歯科医を受診し、歯周病検査を受けてください。もちろん、歯磨きによる予防が一番大切です。