【講師】 |
『《講演6》肺がんの内科治療の今』
最適な薬を選択
がんや感染症に対する薬は、「正常な細胞にとっては無毒であっても、がん細胞や病原菌には毒になるもの」を目指し、開発が進められています。ただ、がんは自分の細胞から発生したもので、もとの細胞の性質をもっています。そのため完全無毒とはいかず、副作用が出ます。
抗がん剤の代表選手はプラチナとタキサンです。プラチナ製剤は、増殖するがん細胞のDNAを、がんじがらめにして殺します。血液、髪の毛、腸などの細胞に副作用を及ぼします。タキサンは西洋イチイという木に含まれる毒性を利用し、がん細胞が形を保つための支柱に当たる部分の働きを止め、がん細胞を殺します。
現在、抗がん剤はとても多くの種類が登場しています。もし、ある薬物治療で効果が見られなくても別の薬が選択できます。加えて、非常に良い副作用止めが出ており、おかげで苦痛は大幅に軽減されています。そのため今では、外来で通院し、家庭生活や仕事をしながらの治療が主流になっています。
最近では、分子標的治療が注目されています。代表選手はEGFR阻害薬です。手術や放射線治療ができず、抗がん剤も効かない、他に治療手段がない人を対象に臨床試験を行ったところ、劇的な効果が表れました。その後この薬は、特異な遺伝子を持つ人には劇的に効き、遺伝子が特異でない人には全く効かないということが分かりました。そこで現在では、患者さんの遺伝子を調べ、最も適した薬を使うようになっています。
内科では緩和ケアも重要です。肉体的な苦痛だけでなく、心の苦痛を和らげるのが緩和医療です。診断がついた時から緩和ケアを行うことで、寿命が延びることが分かりました。ぜひ活用してもらいたいと思います。