肥後医育塾公開セミナー

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平成25年度 第1回公開セミナー「呼吸器疾患」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器外科学分野教授
鈴木 実

『《講演4》肺がんの外科治療』
胸腔鏡手術が普及


   がんは日本人の死因第1位です。2人に1人が生涯のうち何らかのがんにかかり、がん死亡者の5人に1人が肺がんです。
 さて最近、「がんは放置しておくのが一番」という内容の本を書店で見付けました。皆さんは読まれたことがありますか。臓器などに起こるがんを、非常にゆっくり進行し、他の病気で死亡するまで症状が出ないタイプと、発見されたときすでに遠隔転移があり治療効果が期待できないタイプの2つに分け、どちらも治療は無効としています。
 日本も米国も肺がん治療の専門家が集まり、最善の治療ガイドラインをつくっていますが、その第1選択は手術、放射線、薬物療法などの積極的治療が推奨されています。そして、発見されたがんの進行スピードを知るには、定期的にCT検診を続け、経過を観察する必要があります。また、発見から20年も30年も後にしか症状が出ないがんのタイプは、肺がん全体の約1割しかありません。
 日本には国民皆保険制度がありますので、肺がんを治療せず放置した場合のデータはありません。ただ欧米には、少しだけデータがあります。2006年にCT検診で発見された1期の肺がん患者の手術症例(10年生存率)は、92%の人が手術で治ったのですが、一方で1期の肺がんが発見されたのに無治療の人が8人おり、全員が5年以内に死亡していました。
 手術ができない進行肺がんの患者さんも最近は、治療成績が良くなってきています。それでも、がん治療は無効でしょうか。
 もしがんが小さければ、胸に3カ所の小さな穴を開け、胸腔鏡手術で切除が可能です。通常の手術時間は約30分で終わり、術後3日目に退院できます。早く見つかった肺がんは、そのように治せる時代になっています。