肥後医育塾公開セミナー

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平成25年度 第1回公開セミナー「呼吸器疾患」

【講師】
国立病院機構熊本医療センター呼吸器内科部長
柏原 光介

『《講演3》肺がんの早期診断』
胸部のX線検診を


   肺がんが小さな時期(早期)に手術された場合、患者さんが長生きされることが分かっています。そのためには、胸部X線検診を受けることが大切です。
 2009年度の熊本県の胸部検診における肺がん発見率は人口10万人当たり約60人であり、全国平均の50人を上回っています。ただ、せっかく検診で異常を指摘されても17%の患者さんは、病院に行かずに放置していることが分かりました。これらの患者さんの5年生存率を見ると、すぐに病院を受診した患者さんの51%に対し、1年遅れで治療を開始した人は21%にとどまっています。
 ただX線検診も万能ではなく、6、7割の肺がんしか発見できないことも知っておいてください。横隔膜に隠れた部分、鎖骨や肋骨(ろっこつ)、肺動脈の血管と重なった箇所、すりガラスのように淡い影にしか見えない種類のがんなどは、発見が難しいのです。
 それに対し、低線量胸部CT検診は、X線検診より早期のがんが発見できます。1996年に長野県松本市で実施されたCT検診の発見率は0.48%に上りました。人口10万人当たりの換算では480人となり、X線検診による全国平均50人をはるかに上回り、しかも第1期の早期がんが7割以上含まれていました。ただ一方で、要精密検査となった人が多数に上り、精密検査の手間や出費増大の問題、要再検査者に対し大きな不安感を与えるなど、現在も課題があります。
 そこで、肺がんを早期に見つけるには、まず胸部のX線検診を受けてください。金銭的、時間的に余裕がある人は2年に1度、胸部CT検診を受けると、肺がんが早期に発見できると思います。そして、異常を指摘されたときは放置せず、呼吸器内科を受診してください。