肥後医育塾公開セミナー

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平成24年度 第3回公開セミナー「女性がじぶんで決めること」

【講師】
人吉総合病院産婦人科部長・腫瘍センター長
大竹 秀幸

『講演B 子宮頸がんワクチン』
10代での接種が効果的 70%超の確率で予防も


   年齢層別のがん罹患(りかん)率の統計(国立がん研究センター調べ)を見ると、20〜30代の女性に最も多いのが子宮の出口にできる子宮頸がんです。その子宮頸がんで、女性は生涯で94人に1人が進行がん、50人に1人が初期がんに罹患するとされ、337人に1人の割合で亡くなられています。発症の原因はヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染です。性交渉などで子宮口にできた傷にウイルスが感染することで発症するとされます。若い女性に多い理由は性行動が活発なためと思われます。近年の全国の中学・高校生の初交経験率の調査では、高校1年生で約20%、高校3年生で半数弱の女子が、初交を経験しているという結果が出ています。
 子宮頸がん予防の柱の一つが、検診による早期発見です。早期なら1〜2泊または外来での治療が可能で、費用も安く、子宮を残し出産が十分に期待できます。
 熊本県は2000〜09年の10年間、子宮がんの死亡率が全国ワースト10に4回も入りました。一方、発見が難しい卵巣がんの死亡率は低く、全国ベスト10に5回入っており、地域医療のレベルが低いわけではありません。県での子宮がんの死亡率が高い背景には、若い女性の子宮がん検診の受診率が低いことが原因として挙げられます。
 予防のもう一つの柱は、ワクチン接種です。11〜14歳の女子に対し優先的に接種することで、子宮頸がんの70%以上を予防できるといわれます。HPVのタイプは200種類ほどあるとされ、最もたちの悪い16型と18型のHPVが子宮頸がんワクチン接種の対象となっています。ワクチンは、16型・18型に有効な2価ワクチンと、この2つに加え、「尖圭(せんけい)コンジローマ」という性病を引き起こす6型・11型にも有効な4価ワクチンの2種類があります。
 HPVは正二十面体構造の殻の中にがんの原因となる遺伝子が入ったウイルスですが、2価ワクチン・4価ワクチンとも、病原性がないHPVの殻の成分だけを人工的に造ってワクチンとしています。
 これらのワクチンの副作用は、接種後の痛みや腫れは他のワクチンより強いものの、人工的に造った病原性がないHPVの殻の成分だけを使っているため、生きている病原体を使う生ワクチンのような副作用はありません。また、このワクチンは公費による接種が既に始まっていますが、15万人の被接種者の中で重い副作用の報告は0.002%でしたので、安全なワクチンといえます。ただ、ワクチンですべての子宮頸がんを予防できるわけではなく、ワクチン接種を受けた方でも20歳になったら子宮がん検診を定期的に受けることが重要です。
 県は今、第2次熊本県がん対策推進計画を策定中ですが、ワクチン接種による子宮頸がんの予防を「ウイルスや細菌感染に関するがん対策」の中に具体的な行動目標として盛り込むよう県に要望しています。