【講師】 |
『講演A 妊婦健診をもっと知ろう』
正常な妊娠経過を確認 ぜひ風疹の予防接種を
日本の妊産婦死亡率の低さは世界トップレベルで、それを支えているのが妊婦健診にあるといえます。妊婦健診は母子保健法に基づいて行われ、産婦人科で出された妊娠届けを自分が住んでいる市町村に提出すると、母子健康手帳と一緒に、健診を公費で受けられる受診票が交付されます。かつて費用の一部は自己負担でしたが、2009年4月から、健診(全14回)が無料化されました。
ちなみに母子健康手帳は太平洋戦争のさなかに日本で生まれたもので、現在、世界の約20カ国で採用されています。
妊婦健診の一番の目的は、正常な妊娠の経過を確認すること。妊娠23週まで4週間ごとに4回、24週から35週まで2週間ごとに6回、36週から1週間ごとに4回受診することになっており、予定日までの40週に14回の健診を受けることになります。健診では、B・C型肝炎抗体検査や子宮頸がん検査、エイズウイルス(HIV)抗体検査、風疹(ふうしん)ウイルス抗体検査、梅毒血清反応検査など数多くの血液検査を行います。また流産や早産、合併症、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育遅延、母子感染なども健診で見つけて治療します。産み月に近くなると、母子の状態によっては帝王切開による分娩(ぶんべん)を勧めることもあります。
妊婦は風邪をひいただけでも薬が使いづらくなることから、産婦人科医が風邪の治療に応じることもあります。昨年から風疹が大流行していますが、風疹は妊娠初期に妊婦が感染すると、赤ちゃんの耳や目、心臓に重い障害を残すことにつながる危険性があります。1994年の予防接種法改正で風疹抗体接種が中学生から幼児期に移行したため、79年4月2日〜87年10月1日生まれ(現在25〜33歳)の人は法律の変わり目の時期に中学時代を過ごしており、風疹の予防接種を受けていないケースが多いです。その世代は妊娠適齢期に当たっているため、ぜひ予防接種を受けてもらいたいものです。
熊本県は2002年、新生児死亡率が全国ワースト1位となりましたが、死亡事例の多くは早産が原因でした。これを受けて県は「熊本型早産予防対策事業」を立ち上げました。早産の危険性を高める疾患の検査費用を無料化し、さらに大学や地元の産婦人科、歯科医療機関、行政などが連携して、早産を誘発するといわれる歯周病対策や子宮内の細菌感染対策などを多角的に行っています。
妊娠中の異常を早く発見し、母親が安心して出産を迎えるためにも、定期的にしっかりと妊婦健診を受けていただきたいと思います。