肥後医育塾公開セミナー

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平成24年度 第2回公開セミナー「女性のための医療」〜リウマチ膠原病と自己免疫疾患〜

【講師】
九州大学大学院病態修復内科学分野准教授
堀内 孝彦

『講演A「口のかわき、目のかわき〜知っておきたいシェーグレン症候群の知識〜」』
外分泌腺が徐々に破壊 根気強い治療継続して


   口が渇くドライマウス、目が渇くドライアイ。原因はさまざまですが、その中に難病といわれるシェーグレン症候群が含まれています。シェーグレンとはスウェーデンの眼科医の名前で、彼が、目が渇いて炎症を起こす乾性角結膜炎と耳下腺腫脹(しゅちょう)が関節リウマチに高い頻度で合併すると報告したことに由来します。厚生労働省の調査では全国に10万〜30万人の患者がいると推定され、女性が男性の14倍と圧倒的に多く、50〜70代の人に多く発症します。
 口の渇きは唾液、目の渇きは涙が関係していますが、シェーグレン症候群は唾液腺や涙腺だけでなく、気管支腺、汗腺、胃や膵臓(すいぞう)、膣など全身の外分泌腺が破壊される病気です。外分泌腺の導管に起きた炎症が徐々に広がり、外分泌腺が系統的に全部破壊されていきます。唾液や涙、汗などが出にくくなるほか、喉の潤いもなくなり頑固な空咳が出ます。
 病気が進行すると、症状は外分泌腺にとどまらなくなります。例えば関節痛、消化器症状、呼吸器症状、寒いときに指が白や紫色になるレイノー症状、輪のように赤くなる環状紅斑をはじめとする皮膚症状、神経症状、リンパ節の腫れ、腎臓障害、原因不明の発熱などが起き、間質性肺炎、甲状腺が障害される「橋本病」、胃炎、膣炎をはじめ、全身の臓器に異変が起きます。また抗生物質などへのアレルギーや悪性リンパ腫などを発症、ほかのリウマチ・膠原病を併発する場合があります。合併症がない場合を“原発性"、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病などを合併している場合を“続発性"のシェーグレン症候群と呼びます。
 シェーグレン症候群の診断は、組織を取って調べる病理検査、唾液の分泌状態などを調べる口腔検査、目が渇いているか否かを調べる眼科検査、そして自己抗体が出てくるかを調べる血液検査があり、この4つの検査のうち2つ以上を満たすと陽性と診断されます。検査はリウマチ・膠原病専門医がいる病院、または口腔外科で受けることになります。
 治療はドライマウスの場合、まず塩酸セビメリン、塩酸ピロカルピンなどの薬を飲みます。効果が見られなければアネトールトリチオンか人工唾液を使い、それでも駄目なら、漢方薬、ステロイド薬や免疫抑制剤という選択肢があります。涙が出ない場合は点眼薬を使用。有効でなければ、涙の出口を器具で止め、涙をためる治療もあります。症状が内臓に及んだ場合は、中等量以上のステロイド薬や免疫抑制剤を使った治療、悪性リンパ腫に対しては化学療法を行います。
 シェーグレン症候群には根本的な治療法が見つかっていませんが、根気強く治療を続けていくことが肝心です。