肥後医育塾公開セミナー

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平成24年度 第2回公開セミナー「女性のための医療」〜リウマチ膠原病と自己免疫疾患〜

【講師】
くまもと森都総合病院(旧NTT西日本九州病院)リウマチ膠原病内科部長
中村 正

『講演@「関節リウマチについて」』
手足にこわばりや腫れ 進行すれば全身症状も


   関節リウマチ患者は女性が男性の3〜4倍多く、中でも30〜40代の働き盛りの女性に多く発病します。最初は両手、両足の小関節が対称性にこわばり、腫れて痛みを伴うことが多いですが、膝や肩などの大関節に現れることもまれではありません。手足の指は第1関節ではなく、第2・第3関節が腫れ、治療がうまくいかないと指趾(しし)が外側に変形し、仕事や日常生活が非常に困難になります。関節リウマチが進行すると病変は関節にとどまらず、目や肺、腎臓、心臓、皮膚など全身に及びます。
 原因はまだ完全に解明されていませんが、関節を包んでいる滑膜(かつまく)の炎症で始まる自己免疫性疾患であることが分かっています。私たちの体を構成するタンパク質がシトルリン化と呼ばれる異常な変化を受け、それを体が異物と見なすことで、免疫異常反応が起こります。滑膜にさまざまな炎症細胞が入り込み、軟骨や骨を破壊します。シトルリン化の原因には喫煙、歯肉炎を起こす細菌などが挙げられています。
 関節リウマチになると、発病からほぼ2年以内に約50%の割合で関節破壊が起きることが、分かってきました。炎症による腫れや痛みは、各種の薬を使って抑えることができますが、関節は一度破壊されたら元に戻りません。従って、なるべく早期に治療を始めることが重要です。
 関節リウマチの治療法は、世界的な標準化が進められています。治療内容を3カ月ごとに見直し、関節の腫れや痛みの程度、血液検査の結果などを総合して疾患活動性のチェックを行います。
 その治療の核になっているのが、抗リウマチ薬の中で中心的役割を果たすメトトレキサートです。2003年からは、日本でも生物学的製剤が使えるようになりました。炎症を起こす物質、またはその物質の活性を抑えることを標的にした薬剤で、現在6種類あり、近いうちに数種類が加わります。
 早く治療を始めるほど関節破壊の進行速度が緩やかになり、その程度も少なくて済みます。また、以前の治療目標は「痛みをとる」でしたが、有効な薬が登場してきたことで、「関節の機能を長持ちさせる」「関節破壊を抑える」と変化し、そして現在では、痛みも腫れもなく日常生活が普通に送れる状態である「寛解(かんかい)」が目標になってきました。
 関節リウマチは全身性疾患のため、眼科や皮膚科、呼吸器科、腎臓科などの専門医と協力し、当初から内科的治療を強力に行っていくことが大切です。そして医療従事者、行政、一般市民、薬を開発している企業、患者が一体となり、連携しながら、これからのリウマチ膠原病医療の均てん化を進めていかなければなりません。