肥後医育塾公開セミナー

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平成9年度 第2回公開セミナー「痴ほう症患者ケアの実際とリハビリテーション」

【講師】
(国立医療・病院管理研究所医療経済研究部長)
小山秀夫

『現場支えるマネジメント重要』


   医療や福祉の施設運営、制度の仕組みに強い関心をもって十八年仕事をしてきたが、これには祖父母や母の介護体験が支えになっている。
 十八歳のとき祖父が痴呆(ほう)になり、亡くなるまでの二年間、祖母と母、私が三交代で介護した。十二年前には、五十八歳の母が痴呆、そのあと祖母も寝たきりになった。介護についてさまざまな理論があるが、家族が実際にやるのは大変で、むしろ介護する側が参ってしまう。私の場合は親せき、訪問看護婦、二人のかかりつけ医、ヘルパー、作業療法士などフルメンバーを組んで、最善の在宅ケアをめざした。
 八年前に祖母が亡くなり、一年後についに母は入院。教科書通りのアルツハイマーの経過をたどって二週間前に亡くなった。ケアと一言で言うが、言うのは簡単で実際やるのは大変。また母が私を息子として認知できないというつらい思いも味わった。
 さて、痴呆をうんぬんする前に、高齢者の生活上の問題としては「食う、寝る、遊ぶ」が重要であろう。ダイエットばやりの現代だが、高齢者にとってやせることは危険。しっかり食べてもらわなければならない。
 睡眠も重要で、例えば生活リズムが昼夜逆転する場合もあるが、なぜ眠れないのか、原因を探ることが重要だ。また遊びは、趣味や友人とのおしゃべり、食事、絵をかくことなど幅広くとらえるようにすべきだろう。ある福祉関係者は高齢者のケアで大事なのは「居場所、行き場所、座る場所」とも表現していた。
 在宅ケアを支えるには幾つかの条件がある。家族の力もあるが、呼んだらすぐ来てくれる医師、看護婦、ヘルパーをつくっていくことが大事だ。施設面では入院や入所がしやすいサービスにすることが、逆に安心して在宅ケアを支えることになる。
 結局サービスを変えていくのは利用者の声。地域社会のケア体制は一人ひとりがつくるものであり、ケアの現場は確実に変わっている。それだけに現場で働く人を支えるマネジメントもまた重要になってくる。