【講師】 |
『《特別講演1》医療・福祉分野で活躍する世界初のロボットスーツHAL』
人の意思感知し動作を支援
これまで開発を進めてきた「ロボットスーツHAL(ハル)福祉用」は、人の筋力の代わりとなる自立動作支援ロボットです。装着者の、立ちたい、歩きたい、物を持ち上げたい―などの思いは、脳から脊髄、運動神経を経て筋肉に伝達。体に貼り付けたシール状のセンサーが、その際に皮膚表面に漏れ出してくる微弱な信号を感知し筋力の代わりとなるモーター内蔵ユニットが反応して動きます。
人の運動意思によって人と一体となって動く世界初の制御技術である「サイバニック随意制御」とともに、歩く時の重心移動や体のバランスをセンサーが感知しロボットのように自動制御する「サイバニック自律制御」という、2つの制御機能が働きます。各部に小型コンピューターが内蔵されており、また多重に安全機構が施され、発生する力の量はボタンで調整できます。「HAL」の制御原理を用いると、促通反復療法にもみられるように、脳神経系と筋骨格系との間でのフィードバックを実現することもできます。症状にもよりますが、装着者が思い通りに体の筋肉を動かせない場合でも脳神経・身体系の回復を支援する効果が期待できるといわれます。
リハビリ療法士がHALを装着して通信機能を使い、離れた場所から指導を行う遠隔リハビリ技術も開発しました。患者の体が思うように動かないと、動きづらさが療法士にも伝って患者の体の状態を感じ取れるよう設計され、今後の展開が期待されています。昨春から本格展開が始まり、下半身型(両脚、右単脚、左単脚)3タイプを出荷。現在、110以上の病院や福祉施設で導入され、250体余りが稼働中です。単関節型も本年度中には出荷できればと考えています。
HALのセンサー技術や、これまで開発を進めてきたバイタルセンシング技術は、幅広い分野で活用できます。例えば、従来は病院でしか検査ができなかった血液中の酸素濃度、血液血栓指標、動脈硬化指標、脳活動などを捉える技術の開発も進んでいます。国内外の学会からも幾つか賞を頂戴し、血管障害の予防に貢献できればと思っています。
これらの製品は、私たちの社会生活の中で“生きた技術"にする必要があります。そのため、基礎研究から製品化まで、医師や理学療法士などの専門家や、一般患者であるエンドユーザーと一体となって進めながら、医療・福祉分野のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。