肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成23年度 第2回公開セミナー「リハビリテーションのいまとこれからを考える」

【講師】
熊本大学医学部附属病院リハビリテーション部助教
大串 幹

『《基調講演》気になるリハビリテーション〜最近の話題(トピックス)〜』
新たな神経路の発達で機能改善


   脳の一部が損傷することで起きた、まひなどの症状に対し、脳と筋肉の間に新たな神経路を発達させ、回復に導くリハビリ・ケアが最近、話題になっています。
 まひした手足を強制的に使う「CI療法」、神経路の興奮水準を高める「促通反復療法」(川平法)、患者の頭の外側から大脳の局所を苦痛のない磁気で刺激する「TMS治療」、これをリハビリに併用し1〜2週間入院して治療する東京慈恵医大の「NEURO(ニューロ)」プログラム―などがそうです。また、電気刺激で手を動かそうとしている筋肉の収縮をサポートする「HANDS(ハンズ)療法」というのもあります。これを約3週間続けると、治療終了後もしばらく改善が保たれ、肘や肩にも2次効果として改善がみられます。
 近年は医療・福祉分野で、ロボットの活用が広がっています。
 一つの例が、動物型ロボットを用いた「アニマルセラピー」です。人間はかわいいものを見ると心理的に優しい気持ちになり、元気づけられ、生理的にはリラックスし、血圧や脈拍が安定。社会的には動物を話題にしたコミュニケーションも図れます。
 動物型ロボットには、そうした動物の良い点が多く備わっています。認知症の改善にもつながり、介護ケアの負担が軽くなることも分かっています。
 最後に、リハビリ用歩行器の「Kappo(かっぽ)」(熊本大医学部附属病院リハビリテーション部、崇城大芸術学部デザイン学科、有園義肢の共同開発)について紹介します。
 これはペダルのない自転車のような乗り物で、サドルに座り、足で蹴って前に進みます。半身まひの人が1週間使用したところ、移動するスピードが健常者の歩く速さに近づき、しかも足を動かしやすくなりました。前にかごが付いているので、足腰の弱った人が買い物に行く際の移動手段としてもお薦めできます。
 リハビリ・ケアは医師や看護師・各種療法士などの専門家チームで行いますが、近年はそれに工学系技術者・研究者も加わり、新しい治療法が生まれています。