肥後医育塾公開セミナー

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平成22年度 第2回公開セミナー「呼吸器疾患の予防と治療 ぜんそく、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)」

【講師】
くまもと禁煙推進フォーラム副代表・たかの呼吸器科内科クリニック
高野 義久

『タバコ環境と疾患・禁煙のすすめ』
未成年の喫煙防止と受動喫煙対策が重要


   たばこを吸うと寿命が縮むといわれます。研究によると、寿命は平均4〜10年短くなるようです。寿命は短くなりますが、寝たきり期間は逆に5年長くなるというデータもあります。最近の調査では、すぐに禁煙したい人が2割、いつか禁煙したい人は6割もいますが、なかなかやめられないのが現実のようです。それは多くの喫煙者が「ニコチン依存症」という病気になっているためです。
 日本の喫煙者の8割は、未成年のうちに喫煙が常習化しています。文科省が行った調査によると、母親が喫煙する場合、その子どもに喫煙の傾向が強く見られます。未成年の喫煙を防ぐには、たばこのない「無煙環境」をつくることが重要です。学校を全面禁煙にしたことで、生徒の喫煙指導件数が激減したという広島県の実例もあります。全国の8つの都道府県では既にすべての学校の敷地内が完全に禁煙となっています。しかし残念ながら、熊本県は2009年時点で18%と全国最低です。
 未成年者の喫煙とともに受動喫煙をなくすことも重要です。換気扇の下やベランダで喫煙すれば回避できると思われがちですが、たばこの有害物質は、換気扇から完全に排出されず室内を漂い、受動喫煙が起こります。さらに、有害物質は喫煙者の衣服に付着し、吐く息からも出てくることが明らかになっています。
 カナダでは、受動喫煙防止のための法律を制定しました。公共の場、職場の禁煙に加えてレストランを禁煙にした段階で、大きな変化が起きました。心筋梗塞の発生が17%、心臓血管疾患が39%、せきやぜんそくなどの呼吸器疾患は30%も減少したのです。このような公共の場での完全禁煙効果は他の国からも次々に報告されています。厚労省は、国内の受動喫煙による死者が年間約6800人に上ると推計しています。
 たばこのない環境は、未成年の喫煙防止、受動喫煙防止のために必須です。そのためには灰皿をなくすことが近道です。禁煙して後悔する人はいません。その環境づくりのため、ご協力いただければ幸いです。