肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成22年度 第2回公開セミナー「呼吸器疾患の予防と治療 ぜんそく、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)」

【講師】
久留米大学呼吸器・神経・膠原病内科部門教授
相澤 久道

『慢性閉塞性肺疾患(タバコによる肺障害:肺気腫)について』
早期治療で進行防止 肺機能検査の受診を


   慢性閉塞性肺疾患は、世界的には「COPD」といわれますが、2つの病気の総称です。1つは、肺が古いスポンジのようになり、十分に収縮できなくなる肺気腫。もう1つは、常にのどがゴロゴロして、せきやたんが止まらない慢性気管支炎です。
 COPDは40歳以上に多く発症しています。風邪でもないのにせきが続く。たんが出てのどがいつもゴロゴロしている。息切れしやすい―などの症状があります。
 WHOが調査した死亡原因データによると、COPDは1990年に世界第6位でした。これが2020年には3位になると予想されています。日本での患者数は現在約530万人、そのうち診断を受けた人はわずか50万人ほどで、さらに治療を受けた人は20万人しかいないといった状況です。診断すら受けていない人が約9割を占めることから、将来、COPDが重症化した患者さんが増えるとみられます。
 なぜ日本ではこれまで、COPDが見落とされてきたのでしょうか―。それはCOPDの症状が徐々に進行することで、特に、たばこを吸っている人は症状に気付きにくいためです。また医療関係者の中には、一度壊れてしまった肺の治療は不可能と思っている人もいるようです。しかし、そんなことは決してありません。
 COPDの治療で大切なのは禁煙。これで病気の進行を遅らせることができます。抗コリン薬やβ(ベータ)刺激薬などの薬物療法も効き目があります。ただ喫煙していると薬が効きにくいので、減煙や節煙ではなく完全な禁煙が必要です。呼吸状態が急に悪化する急性増悪に備え、年1回のインフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種も有効です。そのほか腹式や、口をすぼめながら息を吐く呼吸訓練、足や呼吸筋を鍛える運動療法、高濃度酸素を吸入する酸素療法など症状に応じた治療を行います。
 COPDは放っておくと死に至ることもある怖い病気ですが、早く見つけて治療すれば進行を防ぐことができます。そのためにも肺機能検査の受診をお勧めします。