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『タバコを吸うと誰でも肺がんになるのか?』
6人中1人にリスク 血管の病気にも注意
日本では肺がんの患者さんが増え、がんによる死亡では肺がんは胃がんを抜いて、トップに立っています。WHO(世界保健機関)は2020年にも、肺がんが世界の死亡原因の第5位になるという推計を発表しています。
肺がんは、喫煙が大きな要因といわれます。英国ではその因果関係を調べるため、長い期間をかけて疫学調査が行われました。それによると、1日にたばこを20本以上吸う人は、それ以下の人に比べて20倍も肺がんになりやすいという結果が出たそうです。
米国と日本の肺がんの違いを比べると、米国人の肺がんの9割が、たばこが原因で、そのうち能動的喫煙(自身の喫煙)によるものが8割5分、受動的喫煙(他人の喫煙)が5分という割合でした。
日本では、肺がん患者さんのうち喫煙が原因とみられるのは男性の7割、女性の2割。つまり日本人女性は、たばこを吸わなくても肺がんになる人が多いのです。また患者さんの5年生存率をみると、日本人の肺がんは米国人に比べて治りやすいことも分かりました。
とは言え、日本人にとってもたばこは肺がんの第一の原因であることに変わりはありません。現在、たばこを吸う人が肺がんになる確率は15%、6人中1人という計算です。これは、弾を6発込められる拳銃に1発だけ弾を入れ、自分に向けて引き金を引く「ロシアン・ルーレット」のようなもの。そう考えると、たばこを吸う人は、あまりにも楽天的過ぎるのではないかと思えてなりません。
たばこを吸っていると、肺がん以外のがんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、心臓病や脳卒中などの血管の病気にもなりやすくなります。また吸い過ぎると、やにで歯が黒くなるばかりか、「スモーカーズフェース」といって、顔にしわが多くできる現象も見られるようになります。
江戸時代の学者、貝原益軒は著書「養生訓」の中で既に、たばこは吸わない方がよいと、述べています。先人の教えに耳を傾ける必要があるようです。