肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

平成21年度 第3回公開セミナー「あなたの身近にある肝臓の病気」

【講師】
水俣市立総合医療センター栄養科長
山下 茂子

『〈講演4〉肝臓病にならないための食事、良くする食事』
要因は嗜好品の過剰摂取 栄養素のバランスが基本


   近年、生活習慣や食習慣に起因する肝臓病が増えています。病態の進行を抑え、予防するには日々の食生活の改善が欠かせません。まずは、脂肪肝を防ぐ食事についてお話しします。
 脂肪肝はアルコールやお菓子、ジュースといった嗜好(しこう)品の過剰摂取や、外食過多などが要因です。なるべく控えてください。どうしても食べたい(飲みたい)ときは、量を抑える、習慣化しないなどルールを決めること。ちなみに、スナック菓子には、1袋でご飯茶わん6杯分のカロリーがある食品もあります。
 食事療法では、6大栄養素(炭水化物、タンパク質、ミネラル、食物繊維、ビタミン、脂質)のバランスの取れた食事が基本です。食事のたびに、ご飯に加え、肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク源を1品、そして野菜類をバランスよく取ってください。一日のエネルギー摂取量は、標準体重(身長メートル×身長メートル×22)×30キロカロリー以内が基準です。
 脂肪分や摂取カロリーを控える工夫は、植物性の油を使ったり、ゆでる、蒸す、煮るなど油を使わない料理法を活用したりすることでも可能ですから、積極的に取り入れてください。
 次に、肝臓病の主な病態に合わせた食事についてご紹介します。肝臓病の人は肝臓の解毒作用が低下しているため、食品添加物を使った加工食品を控えるなど食材選びにも気配りが必要です。
 黄疸がある人は、油脂類を避けること。白身の魚、卵、豆腐など低脂肪で消化が良いものを中心に選び、1日数回に分け少量ずつ取るようにしてください。
 腹水がある人の場合、塩分を1日6グラム未満に、水分を1日1g以下に控えるように。塩分を減らすには、減塩しょうゆのほか、かんきつ類・薬味などの風味、かつお節、昆布、いりこだしのうま味を生かすなどが効果的です。
 肝硬変では、合併症の誘発を避けるため、タンパク質、脂質、塩分の摂取を適量に抑え、食物繊維やビタミンの十分な摂取を。また食道静脈瘤がある場合は、酸味が強いものや香辛料などの刺激物を避けると同時に、魚の骨やナッツ類など、とがった部分がある食べ物には気を付けてください。
 肝臓病にはさまざまな病態があり、食事の取り方も異なりますが、基本は、栄養バランスを考えた食事を規則正しく取ることです。分からないことがあれば管理栄養士に相談するなどして、栄養や食事の正しい知識を持ってください。そうすることで、少しでも不安を解消でき、治療に取り組んでいただけるのではと思います。