【講師】 |
『〈講演3〉メタボリック症候群としての肝臓病』
アルコール、肥満が原因に 生活習慣を正して治療を
飽食の時代を迎えたわが国では、肥満は重大な健康問題になりました。肥満は動脈硬化の危険因子で、進行すると心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの病気につながります。肥満には皮下脂肪型と内臓脂肪型があり、内臓脂肪型が悪玉肥満です。
肥満度の目安でよく使われるのが「BMI(体格指数)」です。BMI=体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)という数式で算出され、数値は22が標準。25以上が肥満、30以上は高度肥満となります。
厚労省は内臓脂肪型肥満を基に、糖尿病、脂質異常症(中性脂肪、コレステロールの異常)、高血圧から発症する「メタボリック症候群」の定義を発表し、その克服を大目標としました。腹腔内脂肪蓄積はウエスト周囲径が目安で、男性85センチ、女性90センチを上回らないことが基準とされています。
さて、脂肪は肝臓にもたまります。毎日お酒を飲み続けるとアルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎に進む恐れがあり、アルコール性脂肪肝は肝硬変や肝細胞がんになります。アルコール性脂肪肝にならないためには、1日当たり日本酒1合、ビール大瓶1本程度を適量の目標にしてください。週2日は、お酒を飲まない“休肝日"をつくることも大切です。
肥満が原因の非アルコール性脂肪肝では、肝硬変になることは少ないですが、一部で、肝硬変や肝細胞がんに進行するケースも出てきました。これを「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼び、にわかに注目されるようになってきています。NASHは、脂肪肝に近い軽症例から肝硬変まで幅広い症状を伴います。
脂肪肝は超音波検査(エコー)やCT検査などの画像診断で分かりますが、NASHの診断は「肝生検」の細胞検査で調べることが必要となります。肝生検とは、細い特殊な針を体表から肝臓に刺し、肝臓内部の細胞を採取して調べる検査です。局所麻酔をして行われます。針を刺すため、多少の痛みはありますが、肝臓自体には痛覚がないため、肝臓には麻酔をかける必要がありません。
アルコール性脂肪肝は「原因はお酒」とはっきりしているわけですから、お酒を断つことが第一です。軽度のアルコール性脂肪肝や肝線維症であれば、断酒すれば肝機能は回復します。また肥満による脂肪肝は、減量によって改善することができ、糖尿病、脂質異常症、高血圧の人はそれぞれの病気を治療することで、脂肪肝が良くなります。減量には食事療法と、歩く、走る、泳ぐなどの有酸素運動を取り入れた運動療法を中心にした治療が行われます。
脂肪肝と診断されたら油断せず、きちんと生活習慣を正し治療することに専念してください。NASHは、脂肪肝から進行しますから、脂肪肝にならないことがNASHの予防になります。