【座長・講師】 |
『〈講演2〉知っておきたい肝臓病の治療』
抗ウイルス剤などが効果 内視鏡的治療なども有効
日本人のがんの死亡者数で、肝がんはこの40年間、男女とも5位以内を占めています。
肝がん死亡の原因は、B型肝炎ウイルス感染が15%くらい、C型肝炎ウイルス感染が75%くらいです。
B型肝炎ウイルスキャリア(B型肝炎ウイルスに感染している人)は約120万人、C型肝炎ウイルスキャリアは200万人以上と推計されますが、肝炎ウイルスによる慢性肝疾患の治療は、肝がん予防に結び付きます。
B型慢性肝炎では、抗ウイルス剤(内服薬)やインターフェロン療法(注射薬)などでウイルスの増殖を抑えることが可能です。また、肝臓の炎症を抑える「肝庇護(ひご)療法(対症療法)」なども、肝臓病の進行を抑えます。
一方、C型肝炎ウイルスは血液から感染するケースが多く、成人で感染すると高率に慢性化し、放置すると肝炎から肝硬変、肝がんへと進展します。C型肝炎ウイルスは、日本では70〜80%を占めるT型と、20〜30%を占めるU型があります。
たとえ薬が効きにくいT型であっても、ペグインターフェロン(効果が1週間持続するインターフェロン)と抗ウイルス剤の併用により、48週間で45〜50%、72週間なら65〜70%の確率で、ウイルスを消すことが可能です。
肝硬変では、コラーゲンという線維が増えて肝臓が硬くなり、血液の流れが障害され、肝細胞も減って肝機能が低下します。進行すると、腹水や黄疸(おうだん)、食道静脈瘤(りゅう)(血管のこぶ)、肝がんなどが合併します。
最近は内視鏡的治療で、食道静脈瘤を治せます。肝がんでは外科的切除に加え、電磁波であるラジオ波などを使って肝がんを固める経皮的治療法、分子標的がん治療薬などが有効です。また、がんワクチンや新たな薬剤で、再発抑制も期待できます。
重要なことは、早期に肝臓の病気を見つけ、治療を受けることです。肝炎ウイルス検査は、保健所や専門医療機関で、無料で受けられます。40歳以上で検査を受けたことがない方は、ぜひ一度受けましょう。一方、高額な治療費に対しても、平成20年度から公的な助成が始まりました。
肝臓病を疑われたら、まずは専門医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。