【講師】 |
『がん診療連携拠点病院の緩和ケアチームの活動』
終末期イメージ払拭へ ニーズ増すチーム医療
患者さんとお会いする前に、担当の看護師と話をしますが、その際、「緩和ケア」という言葉を出さないでください、とよく言われます。理由は、終末期のイメージを思わせるからです。
しかし、緩和ケアは「がんの治療ができなくなった」から行うものではありません。身体と心の苦痛をできるだけ和らげるためのもので、治療と並行して行っていきます。「がん」と診断された時点から、いつでも始めることができます。
がん診療連携拠点病院は、地域全体のがん医療水準向上を目的に、診療、研修、情報提供などの体制が確保されている病院の中から、厚労省が指定します。
平成19年の調べによると、県内には熊大付属病院を含み8施設あり、いずれにも緩和ケアチームがあります。
一方、がん診療連携拠点病院以外でも緩和ケアチームが活動を行っている病院があり、その時の調べでは、県内の14施設で活動していました。しかし、専門医が不足気味という状況もあって、必ずしもニーズに応えられていない部分もあります。
緩和ケアチームについて症例を挙げて説明します。Aさんは肝臓がんで治療中ですが、腰椎(ようつい)に転移が見つかり、放射線治療を行うため入院しました。
Aさんは、足の痛みが続いていることや、将来や家族のことを考え気持ちが落ち込むようになったこと、家に帰れるかどうか不安なこと、治療費が心配なこと―を主治医に訴えました。
主治医はAさんに合った痛み止めの使い方や心のケア、治療費のことなどを考えます。
しかし、いろんな問題に対して主治医は、1人だけで解決することは非常に困難です。その点、緩和ケアチームは数多くのスタッフによって構成されているため、さまざまな問題に対処することができます。
身体の症状に対応する医師や精神科医、薬剤師、そして、緩和ケアを専門とする訓練を受けた緩和ケア認定看護師で構成され、病院によっては、医療費に関する相談などに応じる医療ソーシャルワーカーや栄養士、リハビリ担当者が含まれる場合もあります。
今後、緩和ケアチームが整備されていない病院でも、入院中に基本的な緩和ケアが受けられるよう、主にがんの治療にかかわる医師を対象に、緩和ケアの研修が進められています。
緩和ケア外来を利用すると、通院しながら専門的な緩和ケアを受けることができるようになります。県内でも緩和ケア外来の整備が進められています。
より良い緩和ケアを受けるために、本人が、どこで、どのように過ごしたいのかを明確に意思表示することが大切です。