肥後医育塾公開セミナー

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平成20年度 第2回公開セミナー 「呼吸器・循環器疾患の予防とリハビリ」

【講師】
健康保険人吉総合病院循環器科部長
岡 秀樹

『慢性心不全とはどんな病気か〜予防と治療〜』
再発、悪化防ぐ処置を 効果大きい「運動療法」


  統計によると、日本人の死亡原因はがんが最も多く、次いで心臓病です。今回は、心臓病の中の慢性心不全についてお話しします。「慢性」とは、普段から病気の状態が続いているということですが、「慢性心不全」という一つの病気があるわけでなく、さまざまな心臓病の終末像とお考えください。

 すなわち心不全とは、狭心症、弁膜症、心筋症のほか、高血圧、不整脈、糖尿病、肺や腎臓の疾患など、心臓に負担を掛ける基礎となる病気があり、それらの影響により心機能が低下した状態を指します。

 「慢性心不全」が悪化すると、入退院を繰り返すことが増え、長生きが難しくなります。心臓移植の普及や細胞、組織、器官などを再生する医療が現実になれば話は別ですが、現時点では、慢性心不全は治せません。ですから、再発を予防する、それ以上悪くしない―ということが治療の前提となります。

 手術によらない治療として、服薬だけでなく、食事、運動、禁煙など、患者さんの生活習慣に介入した方法や酸素療法、低温のサウナを利用した和温療法などがあります。いずれも心臓への負担を減らす治療です。特に、運動療法の効果は驚くべきものがあります。統計では、運動療法を行わず何事もなく5年間過ごせた人は1割程度でしたが、運動療法を行うと、約6割の人が入院せず日常生活を送れた、という結果が出ています。

 治療の効果を高めるため、ヘルスケアスタッフ(医療従事者)がチームを組んで医療を進める活動(包括的心臓リハビリテーション)が、とても重要になります。心リハでは手術以外のすべてが治療の要素となり、患者さんが体力を回復し、症状が改善するようサポートしています。

 患者さんは、かかりつけ医師の診察を定期的に受け、まずは、自分の病気のことをしっかり理解しましょう。薬をきちんと飲むとともに、脈の数え方を覚え、軽い適度な運動を実践してください。運動は体調を見ながら、無理のない程度に続けることが大切です。普段の食事にも気を付け、たばこは絶対に控えてください。