【講師】 |
『心筋梗塞・狭心症とはどんな病気か〜予防と治療〜』
発症の二次予防が肝心 有効な包括的リハビリ
狭心症の疑いがある場合、運動負荷検査や24時間心電図検査のほか、112ミリの細い管を使って心臓カテーテル検査を行うケースもあります。これには入院が必要ですが、最近は技術進歩のおかげで、CTやMRIで心臓が評価できるようになり、外来でも可能になりました。
治療法は薬を飲み、それでも発作が治まらなければ、血管が狭くなった部分を広げ、血液の流れを改善する風船治療やステント(金属でできた網状の筒)治療を行います。ただ、拡張してもまた細くなる再狭窄が起きることがあり、「年に2度、3度この治療を受けた」という人もいます。最近は、薬剤を塗布したステントで再狭窄は激減しました。
心筋梗塞について強調したいのは、狭くなった血管が徐々に閉塞していくのではなく、3分の2の人は、むしろ狭くない血管が急に詰まって心筋梗塞になっています。風船やステントで局所的に血管を広げても、違う部位が詰まって心筋梗塞は起きてしまいます。それだけに、一度病気になった人が2回目を発症しないようにする二次予防が重要です。
二次予防に関し、最近では「包括的心臓リハビリテーション」という概念が広がっています。運動指導なら理学療法士、栄養指導なら管理栄養士、服薬指導なら薬剤師、生活指導なら看護師というように、さまざまな専門スタッフが一つのチームを組み、包括的に患者さんを支えるものです。中でも運動療法が中心になります。心肺機能の回復や、筋肉・骨の老化防止、冠動脈狭窄の予防、悪玉コレステロール値を下げ善玉コレステロール値を上げるほか、血圧や血糖を下げてストレスを解消し、不整脈も減る方向に進みます。
私が担当した89歳の女性の患者さんの症例でも、急性期の病院で治療を行い、それから心臓リハビリ専門の病院に移ったところ、その回復ぶりに感動した覚えがあります。
最近は包括的なリハビリをする病院の数も増えています。そういうところで、きちんとリハビリを行うことが、二次予防のためにも有効だと思います。