【座長・講師】 |
『@心臓・血管の病気を予防するためには A禁煙による循環器疾患の予防』
@「心臓・血管の病気を予防するためには」
動脈硬化は「全身病」 危険因子に注意して
まず、心臓・血管の病気についてお話しします。心臓は1日に10万回も収縮と拡張を繰り返しながら、全身に多量の血液を供給する“働き者"です。この働き者に活動のエネルギー(血液)を供給しているのが心臓を覆う冠動脈です。この冠動脈に動脈硬化が起き、狭窄や閉塞が生じると、心臓へ十分に血液が供給できなくなります。心臓に一過性の血液欠乏状態が生じると狭心症となり、血液が供給されないことによって心筋の一部が死んで(壊死)しまうと、心筋梗塞になります。動脈硬化は、心臓だけでなく、脳や末梢血管などで発生する全身病です。
動脈硬化の危険因子は、高コレステロール血症などの脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙、メタボリック症候群などとされています。
現在、日本人のコレステロール摂取量は、すべての年齢で米国人を上回っていると報告されています。欧米型の食事や自動車の普及など生活環境の著しい変化によって、動脈硬化の危険因子を持つ人が急増しています。
心臓や血管など循環器病の予防と治療のためには、動脈硬化の危険因子をコントロールすることが重要です。
A「禁煙による循環器疾患の予防」
喫煙は動脈硬化も誘発
喫煙はがんの危険因子であることは皆さん、ご存じと思います。喫煙はがんだけでなく肺気腫などの呼吸器病や動脈硬化も誘発。また糖尿病やメタボリック症候群を引き起こし、直接・間接的に動脈硬化に関与します。
35歳以上を対象にした生存率の統計によると、たばこを吸わない人の70歳時点での生存率は81%、80歳で60%。一方、たばこを吸う人は70歳で60%程度、80歳で25%です。このように、たばこを吸うと寿命にも影響が出てきます。
米国などで実施されている、職場や公衆の場を対象にした禁煙条例の事例を見ると、公共の場を禁煙にすることで、心筋梗塞の患者数が半年後には確実に減少します。これは、受動喫煙の害を示唆するとともに、循環器系疾患は、禁煙することで速やかに予防できることを明らかにしたものです。自分のためだけでなく周りのためにも、たばこはいつやめても遅くないと言えるでしょう。