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2008年 「まいらいふ」8月号

「無症候性脳梗塞」とはどんな病気ですか?
脳ドック検査で「無症候性脳梗塞」と言われました。どんな病気で、日常生活ではどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。(55歳 男性)

症候性脳梗塞と無症候性脳梗塞

 脳梗塞(こうそく)とは、脳の血管が詰まり、栄養や酸素の供給を受けられなくなった部分の脳細胞が死滅してしまう状態をいいます。それによって、傷害を受けた部位の脳の機能障害が起こり、手足の動きが悪くなったり、言葉がもつれたり、といった症状が出現した場合を、「症候性脳梗塞」といいます。
 一方で、最近、MR?(磁気共鳴画像)の普及により、症状を伴わない小さな脳梗塞が発見される機会が増えています。無症状で偶然に発見される脳梗塞を「無症候性脳梗塞」といいます。


無症候性脳梗塞の頻度・傾向

 無症候性脳梗塞は、脳ドックを受診した健常成人の約16%に認められ、年齢とともにその頻度は上昇します。70歳以上では約35%に認められたという報告もあります。また、無症候性脳梗塞を指摘された人が、将来「脳卒中(症候性脳梗塞を含めて症状が強い脳の血管障害を指します)」を発症する頻度は年間約3%といわれており、ない人に比べて10倍も高いと報告されています。


原因・予防法
熊本大学医学部附属病院 
脳神経外科 
講師
甲斐 豊

 そこで、症候性にならないように予防するために、危険因子の管理が重要となってきます。「無症候性脳梗塞」の危険因子には、加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓の不整脈、頸(けい)部の動脈狭窄(きょうさく)、血液の凝固亢進(こうしん)状態(ドロドロ血)などがあります。
中でも、高血圧に注意することが大切で、塩分を控えた食事、適度な運動、ストレス発散に心がけてください。また、喫煙しているなら、ぜひ禁煙してください。さらに暑い時期に屋外で仕事やスポーツをするときは、脱水にならないように十分な水分補給を心がけることも大切です。
 「症候性脳梗塞」にかかった人の場合、血小板の機能を低下させて血管を詰まりにくくする抗血小板薬を内服することで、脳梗塞の再発を予防できることが証明されています。しかし、「無症候性脳梗塞」を持つ人の場合の、抗血小板薬の脳卒中予防効果の有効性に関しては、医学的な結論が出ていません。安易に使用した場合、脳出血の危険性が増加することも指摘されています。MR?で「無症候性脳梗塞」を指摘されたら、危険因子をコントロールしながら、年に一度MR?検査を受けられることをお勧めします。