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2008年 「まいらいふ」6月号

肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)について
いつものように洗濯物を干そうとした際、肩が痛くて腕が上がらず「いよいよ五十肩か」と思ってがっくり。ところが、そのうちに動かさないのに痛むようになりました。友人たちは「すぐ治る」と言うのですが、そのままにしていてもいいでしょうか。(53歳 女性)

五十肩と肩腱板断裂

 江戸時代から「五十肩」という記載があり、当時は五十肩になるのは長寿のあかしでした。その五十肩ですが、自分では五十肩だと思っていても、実は似たような症状の肩腱板断裂であることがあります。


原 因

 肩の腱板とは、肩甲骨(けんこうこつ)から起こり上腕骨頭に付着する4つの筋肉の腱の総称です。肩の運動時に上腕骨頭を安定させ、バランスを取る重要な役割をします。また、肩甲骨と上腕骨という骨に挟まれた特殊な筋腱です。脚立から落ちて肩を打撲したり、転んで手をつくなどのけががきっかけで断裂することもあれば、けがなどの誘因のない場合もあります。誘因のない場合は、腱板の老化や使い過ぎのため、骨に挟まれた腱板が徐々にすり減って生じます。


外傷などの誘因がない場合の症状

 棚の物を取ろうとして手を上げようとするとき、食卓の醤油に手を伸ばして取ろうとするとき、エプロンのひもを後ろで結ぶとき…などに、肩や腕に痛みが走ります。症状が進行すると手が上がらなくなり、夜間にうずくようになります。これらの症状は五十肩と似ているため、患者さんは五十肩と勘違いし、病院を受診するのが遅れる傾向があります。ご相談の方も、このケースではないかと思われます。


診断・治療法

 レントゲン検査では肩腱板断裂は分かりませんが、MRI検査を行うと断裂の大きさまですぐに分かります。中高齢者で断裂が小さいときは、手術をしなくても症状が取れる場合も多くみられます。 治療は安静、消炎鎮痛薬の内服、リハビリです。ステロイドやヒアルロン酸の注射も炎症を抑えるのに用いられます。一方、比較的年齢の若い人で、けがによって生じ断裂が大きい場合、多くは手術が必要となります。腱板は上腕骨の付着部からはがれるように切れているため、自然に元通りになることはないからです。手術の傷が小さく、術後の痛みが少ない内視鏡(関節鏡視下)手術も行われています。手術後はリハビリを行います。


予防法
熊本大学大学院
医学薬学研究部
運動骨格病態学分野
准教授
井手 淳二

 運動不足は体全体によくありません。一方、腕の使い過ぎは肩によくありません。けがをして肩の痛みが続く場合や、けがなどの誘因はなくても肩の運動痛・夜間痛が続くときは整形外科を受診しましょう。