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2008年 「まいらいふ」5月号

子どもに「てんかん」の疑いがあると言われ、不安です
7歳の息子。ある日睡眠中に突然声を上げ、体がひきつっているような状態になりました。まもなく収まりそのまま眠り、翌日はいつもと変わらない様子でした。しかし同じようなことが繰り返し起きるようになり、「てんかん」の疑いがあると言われました。どんな病気なのでしょうか? 不安です。(33歳 女性)

てんかんとは

 てんかんはまれな病気ではありません。100人に1人くらいの割合で起こると考えられています。古代には超自然的なものといった考えもあり、最近まで迷信や偏見も残っていました。しかし現在では、脳の神経細胞の過剰な活動による何らかの発作が繰り返される病気であるということが分かっています。


症 状

 一般には、突然意識を失い、倒れて体を硬くし、けいれんを起こす発作をイメージすることが多いようです。しかし実際にはてんかんの症状は多彩で、必ずけいれんが起きるというわけではありません。意識が保たれている状態で感覚障害や運動障害を起こすもの、意識が短時間途切れて、その間、動作が停止するだけのもの、意識が途切れた状態で歩き回るものもあります。このように外から見ただけでは分からない場合もあるため、診断には専門医による詳しい診察と検査が必要です。


原 因

 原因はさまざまです。発症しやすい素因を生まれながらに持っている人もいます。細菌やウイルスなどの感染症、あるいは頭部外傷などによる脳の障害により発症することもあります。また、成人になってから脳血管障害の後遺症として発症することもあります。原因によっては、てんかん発作と知的障害や身体障害が合併することもあります。


治療法・改善策

 治療の基本は、発作を予防する抗てんかん薬の内服です。いくつかの種類から、どの薬が有効かをまず判断する必要があります。大事なことは、指示された量を確実に内服することです。服用を忘れると、たとえ有効な薬でも効果が得られず、医師の判断を誤らせることになります。治療が容易ではない難治性のてんかんもありますが、多くは内服薬により発作のコントロールが可能です。ただし、かぜ薬などとは異なり、抗てんかん薬は長期間服用する必要があります。小児の場合は、成長とともに改善するてんかんもあります。ご相談の症例はこの可能性が高いと思います。


予防法
熊本大学
医学部附属病院
小児科
講師
犬童康弘

 原因がさまざまなだけに、発病をすべて予防することは困難です。むしろ、発病した場合に発作を予防することが重要です。内服薬に加えて、過労や睡眠不足に注意し、規則正しい生活を送ることが基本です。てんかんと診断されると、本人も家族も不安を覚え、動揺する場合が多いようです。社会の一部にまだ迷信じみた考えや偏見があることも事実ですが、神経科学や脳科学の進歩により、てんかんの原因の解明や治療法は少しずつですが、確実に進んでいます。いたずらに不安を覚えることなく、科学的に理解し治療に取り組むことが、何より大切です。一般社会の科学的理解も、今後さらに広がっていくと思います。