脂肪性肝疾患 |
正常の肝臓には少量(重量で約3〜4%)の脂肪が含まれていますが、全肝細胞の30%以上が脂肪滴を持つほどに中性脂肪が増加すると、脂肪肝と呼ばれます。脂肪肝は肝炎や肝硬変に進行する場合があります。それらが今回取り上げる脂肪性肝疾患です。 |
はじめに |
脂肪肝の正確な診断は肝生検の病理組織像で行いますが、腹部超音波(エコー)検査でおおよその診断はつきます。血液検査では、脂肪肝の進行に伴って、肝細胞が壊れた指標である血漿(けっしょう)アラニントランスアミナーゼ(ALT)値が上昇します。 |
アルコール性肝障害 |
アルコール(エタノール)は、消化管で吸収されて門脈からの血流により肝臓に至り、大部分が肝臓で代謝されます。アルコールを摂取すると、脂質の吸収が増える上、脂質の合成が増加し分解が阻害されるため、肝細胞の脂肪化が生じます。 |
非アルコール性脂肪性肝疾患 |
糖尿病や肥満に伴ってアルコール性肝障害に似た肝障害が起こることが分かり、まとめて非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)と呼んでいます。NAFLDは、飽食と運動不足による過栄養を基盤としたメタボリックシンドロームの肝臓での表われ方といえます。過栄養性の脂肪肝は進行しないと考えられていましたが、肝硬変や肝がんに至ってしまう炎症を伴う疾患群があることが明らかとなって、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)と呼ばれるようになりました。 |
熊本大学講師
医学部附属病院 消化器内科 田中基彦 |