虚血性心疾患のトピックス |
心臓が収縮や拡張を繰り返して1日に7トンもの血液を循環させることができるのは心筋(心臓の筋肉)のおかげです。心筋も冠動脈を流れる血液で養われていますが、冠動脈の内腔が狭くなったり詰まったりすると狭心症や心筋梗塞になってしまいます。これらの病気はまとめて虚血性心疾患と呼ばれますが、今回はそのトピックスを取り上げます。 |
日本人の狭心症の特徴 |
[図1]
冠動脈が狭くなると心筋に十分な血液が行き渡らなくなるので、心筋が酸欠状態となり、胸痛や胸苦しさなどの症状があらわれます。この症状は軽いものから激しいものまでいろいろで、どことはいえない広い範囲に感じることが多く、持続は一時的で数十秒から10分くらいで自然に治まり、狭心症と呼ばれます。高齢や糖尿病では、心筋が酸素不足になってもはっきりした症状が出ないこともあるので注意が必要です。この狭心症の原因としては、冠動脈の動脈硬化で血管内腔が持続的に狭くなる場合と冠動脈のけいれん(れん縮、図1参照)によって内腔が一時的に狭くなる場合が挙げられます。日本人では冠動脈れん縮が多く認められます。冠動脈れん縮は突然死の原因にもなり、精神的なストレスと喫煙が引き金となることも知られています。 |
心臓にたまった脂肪が 動脈硬化に関係する? |
[図2]
太っている中高年男性は急性心筋梗塞になりやすく、特に「おなかぽっこり」は狭心症や心筋梗塞に関して危険な徴候です。腹部肥満では、皮下脂肪ではなく、内臓脂肪が増えているのがその理由です。この内臓脂肪が心臓を取り巻くようにあることはあまり知られていません(図2参照)。この心臓の周りの脂肪をCTで測ることができるようになり、おなかの脂肪よりも心臓の脂肪増加が早い時期から冠動脈の異常と関係していることが報告され始めました。心臓周囲の脂肪増加が虚血性心疾患やそのほかの心臓病に関係していることがさらに明らかになってくるでしょう。 |
冠動脈ステント治療後の 注意事項 |
[図3]
動脈硬化で狭くなった血管を内側から風船で押し広げ、さらに広げた血管が再度狭くならないように円筒状の金属の網を血管内に入れる治療法がステント療法です。図3のように、ステントを入れた血管は病気のない血管のようにきれいに広がります。最近は薬を塗った特殊なステントも開発され、ますます効果を上げています。 |
冠動脈や手足の末梢動脈の 狭窄(きょうさく)のレーザーを用いた治療 |
血管内治療には、風船で拡張したりステントを入れたりするほかに、ダイヤモンドで削る(ロータブレータ)方法もあります。ここで紹介するエキシマレーザ血管形成術はレーザーで血管内を掃除≠キるものです(図4、5、6を参照)。大量の血栓ができている症例や、ステントを入れても何回も狭くなる症例(再狭窄)、冠動脈バイパス術に足の静脈を使用して狭窄した症例などに有効です。 |
最後に |
心臓・血管病は現在の死因の3分の1を占めています。今後さらにその原因究明と新たな治療法の開発が期待されます。 |