膵(すい)がん |
特徴的な症状がなく、発見時には進行してしまっていることが多いという膵がん。 それだけに、病態を正確に判断して最適な治療法を選択することが大切です。 今回は、近年、増加傾向にある膵がんについてお伝えします。 |
膵臓(すいぞう)とは |
[図1a]膵臓と周囲臓器の位置関係
[図1b]膵臓の部位分類 膵臓は、長さ約15cm、幅は3 cm?5 cm、厚さ約2 cm、重さ約70gで、図1aのように上腹部の胃の背側にある左右に細長い臓器です。体の右側(十二指腸側)から体の左側(脾臓(ひぞう)側)にかけて、膵頭部・膵体部・膵尾部と3つの部位に分けます(図1b)。色は淡黄色調からサーモンピンクで、弾性のある柔らかな臓器です。 |
膵がんの疫学 |
[表1]癌腫別死亡者数
膵がんは近年増加傾向にあり、わが国のがんの部位別死亡者数では第5位で、年間約2万5000人が死亡しています(表1)。膵がんは、外分泌機能を担う細胞の一つである膵管上皮細胞から発生することが多い悪性腫瘍で、膵臓の腫瘍(しゅよう)の85?90%を占めます。消化器がんのなかでは最も予後不良な疾患で、日本での膵がん全体の5年生存率(診断された後5年間生きた人の割合)は6%程度です。腫瘍径1cm以下の小膵がんでも、5年生存率は57%しかありません。 |
膵がんの症状 |
膵がんに特徴的な症状はありません。また無症状で見つかることも少なくありません。病状が進行するにつれて自覚症状が出てきます。主な初発症状は、腹痛、黄疸(おうだん)や背中の痛みで、次いで体重減少や消化不良症状などを認めます。黄疸の場合には皮膚が黄色くなることよりも、尿が濃くなることで気付くのが多いようです。また糖尿病の急激な悪化は、膵がん診断のきっかけになることがあり、注意信号です。 |
膵がんの治療 |
がんの治療法には、主として3種類あります。外科的切除、放射線治療、そして薬物療法です。腫瘍が局所にとどまり、残存しないように切除できる時には、外科的切除の適応になります。一方、腫瘍が局所にとどまっているものの、重要な血管や隣の臓器に浸潤し、切除しても腫瘍が残存する場合には、放射線治療の適応となります。外科的切除と放射線治療は、がんが局所にとどまっている時に有効な治療法なので、局所治療といえます。 |
最後に |
熊本大学講師
大学院医学薬学研究部 消化器外科学分野 ?森 啓史 膵がんは治療が難しい疾患で、現在多方面から治療法の開発が行われています。現段階では、がん専門医、薬剤師、専任の看護師や栄養士などのメディカルスタッフがチームを組んでいて、しかも数多くの治療経験を持つ病院を選択することが重要だと思います。 |