慢性腎臓病(CKD) |
3カ月以上の期間、腎機能の低下や腎臓の異常を示す所見が持続するものを慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、略してCKD)と言います。透析療法が必要になるリスク が高いだけではなく、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの血管の病気にもなりやすいことが分かり、最近、注目されるようになりました。今回は、この慢性腎臓病(CKD)についてお伝えします。 |
腎臓はどんな臓器 |
[図1]正常の糸球体(PAS染色)
ここで血液から原尿がろ過される タバコで肺が悪くなったり、お酒で肝臓が悪くなったり、太って糖尿病になったという話はよく耳にすると思います。腎臓は、それらに比べてなじみの薄い臓器ですが、尿に関係あることはご存じと思います。腎臓は血液から液体部分をろ過して尿を作る臓器です。体の中で不要になった老廃物や水、ナトリウム、カリウムなどを尿として排せつしています。そのほかにも血圧をコントロールしたり血液の赤血球数を調整したり、体内のカルシウムやリンの調整など、さまざまな働きをしています。 |
慢性腎臓病とは |
正常の腎臓は、生きていくのに必要な機能の5?10倍の能力を持っています。そのため腎機能が正常の10?20%まで低下しないと自覚症状はほとんど出ません。そのため本人が気付かないうちに腎機能が低下している人がたくさんいます。日本での推計では、腎機能が正常の60%以下になっている人が1900万人、50%以下の人が400万人近くいると考えられています。このような状態の人を総称して慢性腎臓病と言います。 |
慢性腎臓病と血管の病気 |
[図2]久山町における慢性腎臓病(CKD)の有無と心血管病累積発症率
二宮利治(九州大学)ほか: 綜合臨牀, 55, 1248-1254, 2006 福岡県に久山町という人口8000人程度の町があります。ここは人の移動が少なく長期間の観察が可能なため、昔から町全体でいろんな病気の原因や発生頻度が調査されています。図2にこの久山町における慢性腎臓病(CKD)の有無と心血管病(狭心症や心筋梗塞)の累積発症率をグラフで示しています。慢性腎臓病があると心血管病を生じるリスクが、男女とも3倍近く増加しています。茨城県、沖縄県、アメリカのサンフランシスコなどでの調査でもこれと同様の結果が得られています。腎臓が悪いと、心臓病や脳梗塞などの病気になりやすいのです。 |
慢性腎臓病のリスク |
では、どういうものが慢性腎臓病を起こしやすいリスクになるのでしょうか。茨城県の住民検診データから慢性腎臓病のリスクファクターが知られるようになりました。高年齢、高血圧、(2+)以上の血尿、糖尿病、肥満、喫煙がリスクとして重要なものと考えられています。蛋白(たんぱく)尿も重要ですが、持続性の蛋白尿があれば慢性腎臓病と診断されますので慢性腎臓病のリスクには含まれていません。興味深いことにこのほとんどが、今流行のメタボリック症候群のリスクとして挙げられているものです。 |
熊本大学大学院
医学薬学研究部 腎臓内科学 准教授 江田 幸政 |