WHO(世界保健機関)は、2002年、緩和ケアについての定義を以下のように変えました。『緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より、痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな(霊的・魂の)問題に関してきちんとした評価を行い、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである』。
つまり、緩和ケアは、がんだけでなく、認知症、脳卒中、パーキンソン病や慢性の腎臓病、慢性の心臓病などいろいろな病気を持っている患者さんやそのご家族の悩みを、病気になって最初のころから皆で支えていくやり方のことなのです。その中で、今回は、『がんの緩和ケア』を中心にお伝えします。
新しい定義に従うと、緩和ケアを受けるのに終末期であるかないかはまったく関係なく、また、治すための治療が終了している必要もないのです。病気になって、何か困ったことが起きていれば、つまり「がんと先生から言われた。ショックだなあ。どうしたらいいんだろう」というだけでも、緩和ケアを受ける権利があるわけです。以前の定義は、『緩和ケアは、終末期の患者さんのためのケア』という考えでした。このような考えはまだまだ多いと思います。
現在、日本では、年間約30万人の方ががんで亡くなります。将来は、2人に1人ががんで亡くなると予想されています。ですから、進歩しているがん治療のことを理解していくとともに、半数近くは残念ながら再発したり転移したりする現実にも向き合わざるを得ません。緩和ケアについて知ることは、人生を大切に過ごすために必要なことだと思います。
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