まいらいふのページ

2010年 「まいらいふ」1月号

子どもの嘔吐(おうと)・下痢(げり)

脱水を防ぐことが重要

 子どもに嘔吐や下痢が起こると脱水を起こしやすく、すぐに元気がなくなります。原因にはウイルスのほか、細菌や原虫など多くのものがあります。しかし、冬に流行する嘔吐・下痢症はウイルスによるものがほとんどだと考えられます。便に含まれているウイルスが手指やタオルなどを介して口から感染します。特にロタウイルスとノロウイルスは、症状や感染力の強さから注意が必要です。
 ロタウイルスによる嘔吐・下痢は、2〜4月ごろ流行し、乳幼児に多く起こり、白色や黄白色の便が特徴です。
 ノロウイルスは、以前は貝などを食べることで感染する食中毒として知られていました。しかし最近は、吐いたものや便からうつる感染力の強いウイルスであることが分かってきました。保育園・幼稚園や学校でも流行することがあります。
 これらは発熱と嘔吐、それから下痢が起こることが多く、嘔吐は半日ほど続いた後に軽くなります。下痢は一日数回から十数回起こり、おむつにしみこんでしまう水のような便がみられます。嘔吐や下痢が続くと体の水分が不足し、脱水が起こります。子どもの嘔吐・下痢ではこの脱水を防ぐことが重要です。


回数を分け少しずつ水分補給を

 治療で大切なのは小まめに水分を補給することです。吐き気が落ち着いたら少しずつ水分を与えてみましょう。1回にスプーン1杯程度の少量の水分から始めて、20〜30分ごとに回数を分け、少しずつ量を増やしてみてください。吐くようであればしばらく待ってもう一度試します。
 嘔吐や下痢を繰り返すとナトリウム、カリウムなどの電解質も失われます。湯冷ましやミネラルウオーターだけでは電解質の補給ができません。またスポーツ飲料では、乳幼児には糖分が多すぎて電解質が不足します。薄めた味噌汁や乳幼児用のイオン飲料、お茶や野菜スープなどを飲ませましょう。
 吐き気が続いている間は、水分を補給していれば無理に食べさせる必要はありません。吐き気がなくなったら、薄めたミルク、おかゆなどの消化のよいものを少しずつ与えてみましょう。食べ物は様子を見ながら少しずつ増やしてみてください。ぐったりして、まったく水分が取れない場合は、早めにかかりつけ医の診察を受けてください。


うがい、手洗いタオルは個人用を
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 そのほかに、うがいと手洗いを習慣づける、食べものは十分に加熱する、タオルやハンカチは個人専用のものを使うことなどが重要です。また、下痢でおしりが汚れたままだと、かぶれやすくなります。シャワーや洗面器などのぬるめのお湯を使っておしりを洗うと、かぶれを防ぐことができます。おしりのかぶれがひどい時は軟膏(なんこう)などを使った治療が必要なこともあるので、かかりつけ医に相談してください。


Q&A
 3歳と1歳の子どもを育てている母親です。最近、子どもは言うことを聞かないし、疲れて育児をやる気がわいてこなくなりました。そんなところに、おなかにまた赤ちゃんができてしまいました。ちゃんと育てられるのか心配です。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 それはおめでとうございます。ある意味こんな幸せなことはありません。ご主人にもおなかの赤ちゃんのことは話しましたか? いろいろ話をすることが大事ですよ。おじいちゃん、おばあちゃん、お友達、ご近所の人にも力になってもらいましょう。
 国も子育て支援を具体的に考えています。大丈夫だと思いますよ。上のお子さんにもおなかの赤ちゃんのことを話して、みんなで楽しみにしましょう。下に子どもができると、上の子はやきもち焼いて赤ちゃん返りしたり、言うことを聞かなくなったりします。そのときは「あなたもこうだったのよ」と、同じようにして大きくなったことを教えてあげましょう。
 先日、ある有名な歌手のお母さんの講演を聞きました。育児に困ったら「大丈夫、できる、幸せ」と声に出して繰り返し、乗り切ってきたそうです。「『疲れる』という言葉を使えば本当に疲れるし『大丈夫』と言えば大丈夫になる」とおっしゃいました。プラス思考、前向きになることで幸せになれる才能のある方だと思います。誰にでも通用するわけではありませんが、多くの人に共感と元気を与えるアドバイスだと思います。試してみてはいかがでしょう? 少しでも「自分は幸せかな」と思えたら大丈夫。そういう元気もないようなら、無理せず、専門機関に相談しましょう。