まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」12月号

子どものじんましん

多くは特発性じんましん

 「かゆいなあ」と思ってふと目をやると、赤く盛り上がった皮膚を見つけてますますかゆくなる。突然起こるじんましんは、強いかゆみを伴い、かくと周りに広がり対応に困るものです。じんましんの原因は、食べ物やペットなどによるアレルギー、温度の変化、日光などさまざまです。しかし多くのじんましんは、原因が分からない特発性じんましんと診断されています。子どもでは、食べ物が原因と考えられるじんましんがやや多いのが特徴です。じんましんの大きさは、数ミリから手のひらより大きいものまであります。特殊なじんましんとして、汗をかいたときに現れる小型のものや、寒い空気にさらされた部分のみにできるものもあります。


呼吸困難を起こすことも

 皮膚には肥満細胞と呼ばれる細胞があります。肥満細胞という名前ですが、体重が増える肥満とは関係ありません。じんましんでは、その肥満細胞から放出されたヒスタミンという物質が働いて血管透過性がこう進し、血管周囲に水分が漏れた浮腫と呼ばれる状態になります。この浮腫によって皮膚は数ミリ程度盛り上がり、同時にかゆみの神経が刺激されることでじんましんの症状が現れます。
 ところが、すべてのじんましんがヒスタミンによる反応によって起こるわけではありません。補体と呼ばれる体を守る成分や、アミノ酸であるヒスチジンの分解物、薬の影響など、さまざまな原因がかかわっていると考えられます。
 じんましんと同じような浮腫がのどや気道などの空気の通り道で起こると、呼吸困難を起こすことがあります。声がかれたり、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする呼吸をしたりするときに、きつくて横になれない、顔色が悪くなるなどの症状があれば、直ちに病院で治療が必要です。


状況によって外用、内服の治療を
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 ほとんどのじんましんは数時間以内に治りますが、1カ月以上くり返して起こる慢性じんましんと呼ばれるものもあります。これは、子どもには少ないと言われています。
 じんましんの治療には、抗ヒスタミン剤の外用(塗り薬)や内服(飲み薬)を用います。とりあえず水や氷水などで冷やすと、腫れやかゆみを抑える効果があります。逆に、風呂に入って温めたりタオルでこすったりすると悪化します。じんましんが体のごく一部分だけに起こっているときは抗ヒスタミン剤の外用を行い、範囲が広いときには内服薬を使います。多くは特発性と考えられるため、原因を取り除くことは難しい上、アレルギーの検査を行っても原因が分からないことが多いようです。特定の食べ物を食べた、動物を触った、薬を使ったなどの関連がはっきりしているときはその除去を行います。食べ物を制限する時には栄養の偏りが心配なので、かかりつけ医と相談しながら行ってください。


Q&A
 小学3年生の男の子です。時々ぼーっとなり、話しかけても意識がないような状態になり、数秒ぐらいで回復します。医療機関で検査をしたところ、てんかんと診断されました。身内にはてんかんはいません。抗けいれん剤を飲むことを勧められましたが、長期に飲む必要があると聞き、どうしたものか悩んでいます。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 意識消失のような発作が複数回あり、脳波検査でてんかん性の発作波が確認され、ほかに原因がないようであれば、診断は間違いないのではないでしょうか。
 てんかんというとびっくりされると思いますし、何か気味の悪い病気と思われがちですが、病因も解明されてきていますし、特別な病気ではありません。100人に1人ぐらいの頻度の高い病気で、遺伝性もあまりありません。
 治療法はほとんどが薬物療法です。お子さんの発作は薬がよく効くタイプだと思いますし、数年後は治療の必要がなくなる可能性が高いと思います。しかし、薬物治療においては長期服用が必要ですし、副作用も出ることがありますので、十分に納得されていることが重要です。われわれも治療することのメリット、デメリット、治療しないことのメリット、デメリットを詳しく説明します。薬物療法中は、毎日規則正しく服用し、勝手に服薬を中断しないでください。
 また、薬物療法以外にも、生活リズムを整え、暴飲暴食・睡眠不足を避け、健康的な生活を送ることが重要です。十分納得できるように、医療機関でもう一度、説明を受けられるといいでしょう。