まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」11月号

女の子の外性器異常

性別判断を誤ることもある陰核肥大

 女の子の外性器として、陰核、陰唇(いんしん)、膣(ちつ)などがあります。陰唇は大陰唇と小陰唇とに分かれ、陰核と小陰唇は男の子の陰茎(いんけい)に、大陰唇は男の子の陰のうに当たります。お母さんの治療に使われるホルモン剤や、赤ちゃんの副腎性器症候群という内分泌系の病気によって、陰核が大きくなることがあります。これを「陰核肥大」と呼びます。また、赤ちゃんの外性器の発達が未熟なときは、性別の区別がすぐに決められない性分化異常のことがあります。この時に、男の子の小さな陰茎を「陰核肥大」と考えて、女の子と判断してしまう場合もあります。
 左右の陰唇が癒着(ゆちゃく)し、膣の入り口を覆うようになったものを「陰唇癒着」と呼びます。多くは外陰部の炎症が治る途中に癒着したもので、乳児健診などで見つかります。癒着の程度が強い場合には癒着をはがす治療を行います。綿棒や器具を使う方法とホルモンの軟膏(なんこう)を塗る方法があるので、かかりつけ医に相談してください。
 成長し、月経が始まるころになり下腹部痛が周期的に次第に強くなるようなら、「処女膜閉鎖」や「膣閉鎖」が原因となっていることがあります。できるだけ早く婦人科で切開する治療が必要です。


痛みやかゆみは尿路感染症、外陰炎かも

 女の子が外性器を痛がったり、かゆがったりするときは、おしっこの通り道や出口の感染症、すなわち「尿路感染症」や「外陰炎」かもしれません。尿の検査をしてたまたま見つかることもあります。抗生物質や炎症を抑える薬などによる治療が必要なので、かかりつけ医を受診してください。珍しいものとしては、ギョウ虫の「膣迷入」があります。ギョウ虫は盲腸にすむ寄生虫で肛門周囲に産卵します。肛門と膣とは近いため、間違って膣にギョウ虫が来てしまうとかゆみや痛みを訴えます。駆除が必要なので、家族全員で市販のギョウ虫駆除剤の内服を行います。


外性器異常に病気が隠れていることも
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 生まれて数日後の女の子に、膣からの出血が見られることがあります。お母さんのおなかにいるときに性ホルモンの影響を受け、赤ちゃんの子宮内膜は肥厚(ひこう)します。出生後はお母さんからのホルモンが来なくなるので、ホルモン量が減少し子宮内膜が脱落して月経が起こります。これを「新生児月経」と呼びます。ホルモンの働きによって赤ちゃんの乳腺も発達し、一時的にお乳が出る「魔乳」が見られることもあります。どちらも自然に止まるので、治療せずに様子を見ます。
 女の子の外性器の異常には、体のほかの部分の病気が隠れていることがあるので、注意が必要です。ほとんどの場合は生まれた後の血液検査や乳幼児期の健診で見つけることができます。しかし、成長の途中で異常が出てくることもあるので、そのときはかかりつけ医に相談してください。


Q&A
 インフルエンザのシーズンが近づいて大変心配です。授乳中の赤ちゃんと3歳の男児がいますが、どうしたらいいでしょうか。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 今年は、通常のインフルエンザと新型インフルエンザが両方流行する可能性があり、注意が必要な状況です。しかし、新型インフルエンザの現在の病原性はそれほど強いものではなく(基礎疾患のある人は注意)、冷静な対応が大切と言われています。
 まずはワクチンが重要ですので、新型に限らず従来の予防接種を含めて受けておくことが大切です。また、日ごろからの予防として、せきエチケットを守る。人混みを避ける。外出時、混み合った場所ではマスクを着ける。せっけんを使った手洗い、うがいを小まめにする。栄養、休養、睡眠を十分に取ることが重要です。これらを守りながらも、「かかったかな」と思ったら、かかりつけ医に連絡して症状を説明し、指示に従ってください。かかりつけ医がいない場合や受診する医療機関が分からない場合は、お住まいの地域の保健所のインフルエンザ発熱相談センターに相談すると、最寄りの医療機関を紹介してくれます。
 新型インフルエンザにも、タミフルなどの抗インフルエンザ薬は有効と言われています。また、授乳中にり患しても、抗インフルエンザ薬を飲んでもかまいませんし、母乳を中止する必要はないと言われています。ただし、マスクや手洗いなど赤ちゃんにうつさない工夫が必要です。