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2009年 「まいらいふ」10月号

早めに見つけたい停留精巣

精子をつくれなくなることも

 精巣(睾丸(こうがん))は精子をつくったり、男性ホルモンを分泌する大切な臓器です。男の赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時に、精巣は腹腔(ふくこう)から鼠径(そけい)管を通って下降します。そして生まれた時には陰嚢内に固定されます。この下降の途中で止まってしまい、陰嚢(いんのう)内には精巣がない状態を停留精巣といいます。
 停留精巣は長くそのままにしておくと、将来精子をつくる能力が低下したり、腫瘍(しゅよう)になったりする事が知られています。乳児検診をきちんと受けて、なるべく早めに見つけたい男児疾患の一つです。
 発生率は成熟児で2%強、低出生体重児では20%前後で、停留する場所は鼠径部または腹腔内です。片側の停留精巣が多いのですが、両側の患児も2〜4割います。60〜70%は生後3カ月までに陰嚢内に自然下降しますので、一定期間は経過を見ていても大丈夫です。ただし、長い間放置しておくと、乏精子症や無精子症になってしまい精子をつくれなくなる事もあります。また、鼠径ヘルニアや精索軸捻転(ねんてん)を合併しやすく、事故で下腹部を圧迫された時、精巣に外傷を受けやすいとされています。ですから自然下降しない場合は、手術で陰嚢内に固定する必要があります。


入浴中や睡眠中に確認を

 正常に下降した精巣に比べ停留精巣は、鼠径部のもので約10倍、腹腔内精巣ではさらにその数倍、腫瘍になりやすいと言われています。自然に降りてこない場合は、早めの専門医受診を勧めています。
 オムツを替える時に陰部は目につきやすく、家族が停留精巣に気づく事もあります。自宅で触診することも可能ですが、乳児が寒がっていたり緊張した場合は、触れにくい事もあります。精巣が最も触れやすいのは、自宅で入浴している時だと思います。体が温まり、子どもがリラックスしているので、陰嚢内精巣をはっきりと触ることができます。睡眠中に精巣の位置を確認するのも有用です。
 また、あおむけの体位で鼠径部に触れた精巣が、オムツ換えなどで腹圧がかかった時に陰嚢内に下降することがあります。これは移動性精巣と言い、停留精巣とは異なり原則的には手術は行いません。小児科医が乳児検診を行っている施設では、必ず精巣を確認します。停留精巣や移動性精巣ではないかと思ったら、検診医に尋ねてみてください。


手術は適切な時期に
熊本中央病院
小児科
医師 中村俊郎

 以前は、1歳までに自然下降があると言われ、乳児期に手術することはまれでした。しかし乳児期中期に手術した方が生殖細胞数を保つことができるとも言われており、最近は1歳前でも精巣固定術を行う施設が増えてきました。片側停留精巣でも放置しておくと、2歳以降に反対側の陰嚢内精巣も障害を受けるという報告もあります。遅くとも2歳までには手術を行うことが望ましいと思います。麻酔科医による麻酔管理が行われれば、1歳前の乳児期でも安全な手術は可能です。小児科や泌尿器科の先生と相談して、適切な手術時期を決めると良いでしょう。


Q&A
7カ月の男の子です。1カ月くらい前に離乳食を始めたのですが、 まったく受け付けてくれません。スプーンを差し出しても口を開けず、 おもちゃと思うのか握ってしまったりします。私が口を開けて入れる と、ベーッとすぐに吐き出します。何とか食べてくれることもあるのですが、30分もすると何もかも嘔吐(おうと)してしまいます。最近は吐かれるのが怖くて、離乳食を与えるのがストレスになっています。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 離乳食をなかなか食べないことはよくあることなので、自分独りで悩まないようにしましょう。
 人間がものを食べるということは本能のようですが、学習的要素もあります。また、食欲は気分に左右されたり、個人差も大きいのでお母さんの思ったようにはできません。子育てで大事なことは、「明るく、楽しく、元気よく、あせらない、ほめる、怒らない、比べない」ことです。
 ですから、離乳食を食べないからと言って無理強いは禁物です。無理強いすると本当に食べなくなりますし、食べても吐いてしまいます。食事については雰囲気も大事です。お母さんお父さんが一緒においしそうに食べて見せるのもいいでしょう。育児サークルなどで、ほかのお子さんと一緒に食事をするのもいいでしょう。
 また、トイレトレーニングでも使う方法ですが、お人形を使ってお母さんが食べさせるところを見せてあげることも効果的です。食べたらほめてあげましょう。