まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」8月号

男の子の外性器異常

成長につれ減る赤ちゃんの真性包茎

 外性器とは、男の子では「おちんちん」(陰茎(いんけい))と「きんたま」(精巣(せいそう))のことです。
 おちんちんの先の亀頭の部分が露出せず、常に周囲の皮(包皮)に包まれている状態を包茎と呼びます。包皮の先の開いている部分(包皮輪)が狭く、亀頭が露出できない場合を真性包茎、包皮を反転すると亀頭が露出できる場合を仮性包茎、と区別します。仮性包茎は陰茎の成長や機能に問題はなく、全く心配いりません。
 赤ちゃんのほとんどは真性包茎ですが、成長するにつれてその割合は減り、小学生で約20%程度、思春期に入るとさらに減少します。そのため、ほとんどの真性包茎は治療せず様子を見ます。治療の対象となるのは、@尿の出始めに先端が膨れて尿がたまるA包皮の腫れや尿路感染をくり返すB包皮を反転した時に亀頭が露出したまま戻らず、包皮輪が亀頭を締め付ける嵌頓(かんとん)包茎、などの場合です。嵌頓包茎は緊急手術が必要なことがあります。
 真性包茎の治療は、包皮の先端に軟膏(なんこう)を塗って包皮を軽く引っ張り反転することを1—2カ月続けます。すると多くは、手術をしなくても済むようです。強く引っ張ると嵌頓包茎を起こす心配があるため、治療はかかりつけ医と相談しながら始めてください。


生後6カ月くらいまで様子を見る停留精巣

 「きんたま」の異常として、停留精巣と陰嚢(いんのう)水腫があります。
 お母さんのおなかの中にいるとき、赤ちゃんの精巣は下腹部にあり、生れるまでに陰嚢へ下降します。完全に下降せずに下腹部や移動の途中 (そ径部)にとどまっている状態が停留精巣で、赤ちゃんの約5%にみられます。お風呂の時などに陰嚢を触って、えだ豆からビー玉くらいの大きさの精巣が両側にあれば異常ありません。停留精巣があっても、生れた後に次第に陰嚢内へ下降することが多いため、まずは様子を見ます。
 生後6カ月を過ぎても停留精巣がある場合は、精子を作る働きが減ったり精巣のがんを起こしたりする心配が後にあるため、1歳ごろを目安に手術を行うことがあります。


よく似た症状の陰嚢水腫とそ径ヘルニア
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 陰嚢水腫は、陰嚢に腹水がたまった状態です。精巣が陰嚢へ移動する通り道から少しずつ腹水が陰嚢にたまります。そのため片側、または両側の陰嚢が大きく腫れて見えます。ほとんどの場合、この通り道は1歳ごろまでに閉じるので、陰嚢水腫も自然によくなります。
 陰嚢水腫によく似た異常として、そ径ヘルニアがあります。そ径ヘルニアでは腸の一部が陰嚢内へ出て戻らなくなり、緊急手術が必要になることがあります。陰嚢水腫とそ径ヘルニアとの区別は大切なので、陰嚢が腫れて見えるときはかかりつけ医に相談してください。


Q&A
2歳の女児ですが、最近1カ月に1回の周期で高熱が出ます。いろんな病院で診ていただきましたが、扁桃炎と言われたり、リンパ節炎と言われたり、診断はまちまちです。熱は高熱で3—4日続きます。炎症反応も上がっているようですが、元気はあり、熱が下がるとけろっとしていますので、それ以上、検査はしていません。しかし、何回も繰り返すのでご相談しました。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 繰り返す発熱で最も多いのは、病原体が異なる複数の感染症の合併です。保育園の行き始めなどに多く、それぞれの幼児で症状が異なります。周期も一定しておらず、連続してだらだら発熱したり、よくなったと思って保育園に行くとまた発熱したりするパターンがあります。心配で大学病院を受診されるケースも多いですが、検査で炎症反応がなかったり、発熱が続く割には重症感はなく、2—3カ月で熱が出なくなります。
 それとは別に、自己炎症性疾患という、感染症ではない周期性発熱性疾患があります。昔からあった病気ですが、最近になって、遺伝的異常が一部、解明されつつあります。その中に周期性発熱、咽頭(いんとう)炎、扁桃(へんとう)炎、頚(けい)部リンパ節炎、口内炎、炎症反応検査陽性を伴う疾患(PFAPAと略します)が注目されています。見逃されることも多く、発症率は案外多いと言われています。原因はまだ不明ですが、ステロイド剤が効果的な例もありますし、長期的には自然によくなり、発熱しなくなりますので、心配はいりません。
 お子さんの場合、PFAPAの疑いもあると思いますので、かかりつけの先生にご相談された方がいいでしょう。