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2009年 「まいらいふ」7月号

子どもの虫歯と歯磨き

6歳児の6割以上にある虫歯

 子どもの歯は、生後6カ月ごろから生え始め、2歳過ぎごろまでに乳歯の20本が生えそろいます。一般に、まず下の前歯が2本、次に上の前歯が2本生えてきますが、生える時期や順番には個人差があり、1歳を過ぎてから生え始めることもあります。また、6歳ごろから12歳ごろにかけて乳歯が抜けるのに伴って、大人の歯である永久歯が生えてきます。
 食べ物などが歯の表面について、そこで増えた細菌が出す酸によって歯が溶かされた状態を、う蝕(しょく)、すなわち虫歯と呼びます。虫歯を持つ子どもの数は最近減っています。その理由として、歯科医による口腔ケアへの取り組み、フッ素塗布やフッ化物を配合した歯磨き使用などが挙げられます。それでも3歳児の2割以上、6歳児の6割以上に虫歯があると言われています。


大切な、乳歯の時からの予防と治療

 乳歯は永久歯よりも虫歯になりやすく、悪化するのも速いです。特に生えてすぐの歯は未成熟で、酸の影響を受けやすいと言われています。乳歯の虫歯があると、栄養、言葉、永久歯の生え方などに影響することがあります。そのため、乳歯の時から虫歯を予防し、治療することが大切です。
 虫歯ができるのには、口の中の細菌、特にミュータンス菌と呼ばれる虫歯菌と、その菌が砂糖を材料としてつくるグルカン(歯垢)の成分とが必要です。ミュータンス菌は周りの人の口の中から自然にうつってしまうのですが、親が口に入れた食べ物を与えると早くから菌がうつりやすいので、できるだけ避けてください。また、おやつだけではなく、食事の味付けに含まれる砂糖も影響するため、できるだけ薄味を心がけましょう。


歯磨きとともに定期的な検診を
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 虫歯になりやすい部位として、歯と歯の間、前歯の付け根、奥歯の溝などがあります。これらの場所は歯磨きも届きにくく、注意が必要です。歯が生えてきたら、少しずつ歯磨きを始めてみてください。最初は歯磨きの習慣をつくることを目標にします。子どもをひざの上に仰向けに寝かせて、歯ブラシを小さく動かしながら歯と歯の間、前歯の付け根などを磨いてあげてください。磨く力が強いと嫌がることが多いようです。子どもの歯磨きには150g程度の力をかければよいと言われます。料理用のはかりに歯ブラシを当てて押さえてみると力の加減が分かるかもしれません。
 歯が生えそろう3歳ごろからは、自分で磨くことにもチャレンジさせましょう。しかし、小学校の低学年までは親による仕上げ磨きが必要です。
 歯と歯の間や、歯の裏側の虫歯は分かりにくいので、定期的に歯科医の検診を受けることも大切です。子どもの虫歯予防には、フッ素塗布やフッ素化合物入りの歯磨きも効果があると考えられています。歯の定期検診やフッ素塗布は、歯科医に相談してください。


Q&A
赤ちゃんが生まれると、以前は産科入院中に血液型を教えていただいていましたが、最近は教えていただけないようです。生まれてすぐに血液型の検査をしないのでしょうか?
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 ご指摘のように、以前は生まれたお子さんの血液型を検査していましたが、最近はしなくなりました。その理由は、赤ちゃんの血液型の判定は難しいことがあり、間違っていることがまれにあるからです。
 通常、ABO血液型の検査はオモテ試験、ウラ試験という二種類の検査を行います。オモテ試験とは、赤血球表面の抗原の型を調べる検査です。ウラ試験は、血清中の抗A抗体、抗B抗体といった抗体の有無を調べます。両者を検査し、一致した場合にABO血液型として判定しています。赤ちゃんは抗体産生が不十分で、ウラ試験はあてになりません。オモテ試験も抗原の発現が不十分で、判断が困難な場合もあります。以上の理由から、赤ちゃんの血液型を安易に判定すると混乱を生じることがあり、輸血や病態診断に必要な時以外は、血液型検査を行わなくなりました。
 以前、一般の産科医院などで行われていた検査はオモテ試験だけですが、全くあてにならないわけではありませんので、ご安心ください。また、実際に輸血が必要な時は、血液型の申告があっても、再度、専門スタッフが判定して輸血を行います。血液型を知りたい方は、1歳過ぎてから検査を行いますが、保険診療では行えないことがあります。