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2009年 「まいらいふ」2月号

言葉の遅れ

発達の遅れが疑われる場合は受診を

 育児相談の時によく受ける質問の一つが、言葉の遅れです。言葉の遅れにはいくつかの原因があります。発達の遅れ、耳の聞こえや口や舌の動きの異常、周囲の環境などです。いずれも、必要な治療や訓練を受けることで、言葉の発達を進めることができます。
 発達の遅れでは、発達性言語障害や自閉症などがあります。発達性言語障害は、知的には正常なのに、言葉を話したり理解したりすることが遅れます。しかし、後から追いつき、正常となるといわれています。ときには注意力や落ち着きのなさが原因になることもあります。
 また、自閉症では発達の過程で他人とのコミュニケーションの少なさが明らかになってきます。視線を合わせない、呼んでも振り向かない、欲しいものを要求しない…などが特徴です。言葉を使ったコミュニケーションも少なくなります。
 このような発達の問題があるときには、子どもの特徴をよく理解するために診察を受けることが必要です。特徴に合った訓練を行うことで、言葉の発達が次第に進みます。


治療や訓練、工夫で促せる言葉の発達

 耳の聞こえについては、日常生活の中で異常に気づくことがあります。気になる場合は、後ろから小声で話しかけてみてください。程度が軽いときには何度か呼びかけると反応するため、周囲には分かりにくいこともあります。詳しくは耳鼻科で聴力検査を受けて調べます。
 最近は、生まれてすぐに聴覚スクリーニングという検査をすることがあります。音を聞かせて脳が反応するかどうかを調べる検査です。この検査で異常があれば、念のため詳しい検査をし、聞こえが悪いかどうかを確認します。聞こえが悪いことが早く分かれば、補聴器を使う、ゆっくり口を動かしてみせるなどの工夫をすることで、言葉の発達を促すことができます。
 一方で、舌の形の違いや口やのどの動きの異常により、上手に言葉が話せないことがあります。その場合には治療や訓練を受けることで言葉の発達を進めることが可能です。
 また、虐待を受けているときにも言葉の遅れが現れることがあります。周囲に虐待を疑うような出来事があったときは、児童相談所や保健所・保健福祉センターなどに相談してください。


遅れを見つける目安参考に
熊本大学医学部附属病院
小児科
助教 中村公俊

 言葉の遅れを見つけるときの目安としては、1歳半健診のころに「ワンワン」「マンマ」などの意味のある単語を話さない。2歳の時に意味のある単語をわずかしか話さない。3歳を過ぎても「あっちいく」「マンマすき」などの2語文が言えない、などがあります。そのような場合には小児科医に相談してみてください。


Q&A
冬にはやる子どもの嘔吐(おうと)下痢(げり)症とその予防法について教えて下さい。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 代表的な疾患に、ノロウイルス胃腸炎とロタウイルス胃腸炎があります。どちらもウイルス性の嘔吐下痢症で、乳幼児に感染者が多く、主に冬季に流行します。
 ノロウイルスは非常に少量のウイルスで感染し、大人でもカキの生食などで中毒を起こす強い感染力を持っています。ロタウイルスは、それほど感染力は強くなく、一般に年長児や成人では感染しても発症しない場合が多いのですが、大人も、自分の子どもから感染する場合があります。感染経路としては、感染した食品、患者さんの便や嘔吐物、その乾燥したものから出るほこりを介しての直接経口感染と、汚染された物の表面(トイレ、オムツ、手すりなど)を触った手からの経口感染などがあります。
 予防には日ごろから手洗いを心がけ、特にトイレの後はしっかり手を洗いましょう。患者さんの排せつ物やオムツの処理の際は、手袋やマスクを着け、汚染を広げないことが重要です。何でも口に入れてしまうお子さんが近くにいる場合は、特に注意が必要です。カキなどの二枚貝を食べるときは、できるだけ生食は避け、十分に加熱して食べましょう。食器、調理具等は、熱湯(85度以上)による1分以上の加熱が有効です。アルコール消毒は効果がなく、次亜塩素酸ナトリウム(キッチン用漂白剤などの成分)による消毒が有効です。感染した人には、人にうつさない配慮もお願いしたいと思います。