熊本大学医学部附属病院 小児科 木脇弘二
学校検尿は30年以上前にスタートしましたが、当初は腎臓病を対象とした血尿・蛋白尿の検査でした。平成4年度に糖尿病の早期発見を目的として法律が改正され、学校検尿での尿糖検査が義務付けられました。
血液のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなり、あるレベルを超えると尿にブドウ糖が出てきます(尿糖陽性)。糖尿病にはいろいろ種類がありますが、いずれも血糖値があるレベルを超えるようになってはじめて検尿でみつかります。おとなで増加している2型糖尿病は、こどもでもやはり増加しており、注目されています。学校検尿では主に10歳以上のこどもたちに2型糖尿病がみつかっています。肥満を伴うお子さんの場合が多いのですが、肥満のないお子さんの2型糖尿病も少なくありません。また、インスリンの注射が必要となる1型糖尿病もみつかっています。1型糖尿病の中にもゆっくり発症するタイプ、急に症状が悪くなるタイプといろいろあります。急に悪くなるタイプが、たまたま学校検尿の時期に発症してみつかることもあります。
「尿糖陽性です。精密検診が必要です。」と連絡があったら必ず受診してください。精密検診では、問診・診察、血糖値やヘモグロビンA1c(一定期間の血糖値の平均を反映します)などの血液検査、尿の検査,そして状況によって「経口糖負荷試験」がおこなわれます。経口糖負荷試験は、負荷前の採血後にブドウ糖入り飲料を飲み、その後決まった時間で繰り返し血糖値、尿糖などを調べる検査です。空腹時におこないますので指示を守って受診しましょう。2型、1型いずれの糖尿病でも適切に治療をおこなえば、通常と変わらない生活を送ることができます。早く正しく診断することが大切です。「症状がないから」といって放っておくことがないようにしましょう。
最後になりましたが、尿糖陽性がイコール糖尿病というわけではありません。「腎性糖尿」という、血糖値が高くないのに尿に糖が出る体質のお子さんも学校検尿でみつかります。腎性糖尿と診断できれば治療は不要です(ただし、ご家族に糖尿病の方がおられるときは経過観察をすることがあります)。また,感染症にかかったときなどに一時的に血糖値が高くなり尿に糖が出ることがまれにあります。これらの糖尿病でない尿糖陽性を診断するには、やはり精密診療を受けることが必要です。