熊本大学医学部附属病院小児科 仲里 仁史
尿は腎臓で作られ、腎盂というところに集められた後、尿管、膀胱、尿道を経て排出されます。尿路感染症はこれら尿の通り道(尿路)の感染症で、菌が逆行し腎盂まで達すると熱が出ます。こどもの尿路感染症は、成人に比べ尿路奇形など基礎疾患をもつ複雑性尿路感染症が多く、将来、腎臓の働きが悪くなる病気も含まれ注意が必要です。
尿路感染症は起こる部位により、腎盂腎炎など上部尿路感染症と、膀胱炎や尿道炎の下部尿路感染症に分けられます。後者は幼児期以降の女児に多く、前者は乳幼児では男児(1歳未満では80%が男児)に、年長児では女児に多くみられます。
<症状>
尿道炎では、下腹部の不快感、膀胱炎では排尿痛、頻尿、残尿感、下腹部痛などがみられます。いずれも発熱はありません。一方、上部尿路感染症では、発熱、悪寒、背中から側腹部にかけた痛みがみられます。新生児、乳児では発熱に加え、哺乳不良や不機嫌などがみられ、お母さんが気付く場合が多いです。
尿路感染症を繰り返す女児や、症状がなく学校検尿で尿路感染症がみつかる女児の場合、外陰炎や膣炎を起こしていることがあります。女児は尿道が短く、また排便時外陰部は汚れやすいので、清潔にすることが大切です。
<診断>
検尿と尿培養で行ないます。培養で起炎菌(原因となる菌)を調べます。起炎菌は大腸菌がほとんどです。大腸菌以外の菌や複数の菌が起炎菌の場合、あるいは発熱を伴う尿路感染症をくり返す場合は、尿路奇形など複雑性尿路感染症が疑われますので、さらに詳しい検査が必要です。
尿路奇形の代表に膀胱尿管逆流症があります。通常、膀胱内の尿は尿管や腎盂に逆流しませんが、この病気では、膀胱の尿が逆流し、尿に菌が混じっていると腎盂腎炎をおこします。繰り返せば腎症や腎機能低下をおこします。これは、こどもの慢性腎不全の原因の一つであること、他の腎奇形の合併の可能性があることなどから、早期に診断する必要がある病気です。
<治療>
十分な水分摂取と頻回排尿、抗生物質の投与です。腎盂腎炎は敗血症になることもあるので、入院し点滴と抗生物質の注射を行ないます。膀胱尿管逆流症の場合、抗生物質の1日1回予防内服を行なうこともあります。
<こどもの尿路感染症のポイント>
1)発見には検尿が必要です。特に発熱時は検尿が大切です。
2)発熱を伴う尿路感染症のなかに、腎尿路奇形など、腎不全の原因となる病気がかくれている場合があります。
3)女児では外陰部の清潔保持に努めましょう。