医療解説

トップページ医療解説 > 大腸がんと腫瘍マーカー
医療解説

大腸がんと腫瘍マーカー

宇賀岳病院外科 江上 寛

1.腫瘍マーカーとその活用法
 腫瘍マーカーは、腫瘍細胞(がん細胞)の目印(マーカー)となる物質の総称です。がん細胞が直接作りだすものから、正常細胞が、がんに反応して作るものなどがあります。血液中や夜尿中の濃度を測定し、がんの存在やその種類、あるいはその進行度を知る目印として使われます。
 わが国では約40種類の腫瘍マーカーが臨床的に用いられています。表に消化器がんの代表的な腫瘍マーカーと各臓器のがんにおける陽性率(値が正常範囲を超えて増加する割合)を示しました。大腸がんのマーカーとしてはCEAが最もよく使われています。
 CEAを含むほとんどの腫瘍マーカーでは、がんがある程度大きくなって多量に作りだされないと、血液中、尿中の濃度は上昇しません。このため、無症状のがんを早期発見する目的で測定するのは一般的ではありません。一方、進行がんでは多くの場合、血液中の値が上昇し、がんが手術で完全に取り除かれた場合、あるいは制がん剤や放射線治療で腫瘍が小さくなったり消えたりすると、この腫瘍マーカーは鋭敏に反応して低下します。また、手術後に再発・転移があると低下していた腫瘍マーカーが再び上昇してきます。このため、臨床的には進行がんの補助診断、手術後の再発・転移の診断、あるいは治療(外科的切除や化学療法、放射線療法)の効果を知る有用な目印として用いられています。

2.初期の大腸がんは無症状。50代から努めて検診を!
 大腸がんは初期には無症状に進行します。何らかの自覚症状が現れたときには、ある程度病気が進行していることが多いようです。大腸がんの重要な症状として、下血や便に血が混じる血便があります。少量の出血の場合はほとんど目に見えません。そのため、顔色が悪いというような貧血の症状が出て初めて気づくことが多々あります。この目に見えない出血をとらえる方法として便潜血反応検査があります。無症状の早期の大腸がんをとらえる方法として最も簡単で有用な検査として、広く検診に用いられています。しかし、この検査にも弱点があります。早期大腸がんでは約30%、進行大腸がんでも約20%では陰性なのです。したがって、この検査ですべての無症状の大腸がんが発見されるわけではありません。確実に早期の大腸がんをみつけるには、やはり注腸透視や大腸内視鏡検査(図)を受けるしか方法がありません。50歳ぐらいからがんが発症しやすい年齢に差しかかります。できれば、症状がなくても一度大腸内視鏡検査を含む検査を受けてみられるか、少なくとも便に血が混じっていたり、貧血に気づいたり、便の潜血反応が陽性と判定されたらすぐに専門医を受診され、精密検査を受けられることをお勧めします。

(図)注腸透視と大腸内視鏡検査 下部直腸左側壁を中心に潰瘍を伴うがん(進行がん)が認められる
(表)消火器がんにおける代表的な腫瘍マーカーと陽性率(血液中)