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「あれんじ」 2011年10月1日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第十七回】「お任せします」に応える

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第十七回】

【第十七回】「お任せします」に応える
熊本機能病院麻酔科
医師 釆田(うねだ) 千穂

 私たち麻酔科医は、手術前日に術前診察を行います。患者さんの全身状態を把握するためです。その時に当院では、麻酔同意書に記名してもらっています。具体的には、「こんな麻酔をする予定です。こんな危険性があります」という説明をし、ご理解いただくのが目的です。ただ、限られた診察時間内に分かりやすく説明することは難しいことが多いです。特にご高齢の患者さんは、「よく分かりませんが、お任せします」と不安そうに言ってサインされます。「どう説明したら、ご自分が受ける麻酔のことを分かっていただけるかなあ」と、悩むこともしばしばです。
 手術室の中で、麻酔科医はまさに患者さんの命を任されているといえます。手術のストレスから患者さんの体を守るのが麻酔科医の仕事です。心電図などのさまざまなモニターの波形を確認し、呼吸や血圧は安定しているか、痛みはないかなどを常に監視しています。 何か変化が起きれば、「診断→原因の鑑別→治療→評価」を繰り返し、患者さんの全身状態が安定するように努めます。麻酔を始めて十年以上になりますが、高齢者や赤ちゃん、危険性が高い方を麻酔した日は、帰宅するとぐったりしてしまい、時にはアイロンがけしていない制服を娘に着せる羽目に陥ります。それでも、患者さんが麻酔から覚めた時に「あ〜、よく寝てました。痛みもありません」と言っていただける時がホッとする瞬間であり、喜びでもあります。
 これからも「お任せします」と言ってくださる患者さんの気持ちに寄り添えるよう、日々努力していきたいと思っています。