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「あれんじ」 2011年9月3日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第十六回】たくさんの感謝

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第十六回】

【第十六回】たくさんの感謝
熊本赤十字病院産婦人科 
医師 林 享子

 「おめでとうございます。元気な赤ちゃんですよ」。仕事をしていて一番感動し、うれしさで胸が熱くなる時があります。
 「先生、私の赤ちゃんを助けてください」。ただ医学的なことしか説明できず、肩を落とすしかない無念さと悔しさでいっぱいの時があります。
 「ありがとうございました」。末期がんの最期、家族に見守られながら家族と一緒に見送る患者さんがいて、私はこの患者さんに何をしてあげられたのだろうと寂しく思う時があります。
 産婦人科は、誕生と死に立ち会うことができる唯一の診療科です。さまざまな喜びと悲しみ、始まりと終わり、誕生の神秘、命の大切さを毎日のように考えさせてくれる仕事です。
 私には3人の子どもがいます。家族が増えることで喜びと責任が増え、近所との付き合い、保育園やほかの保護者との付き合いなど、新たな輪ができました。その中で助け合って生活していくことや子育てについて学ぶことができ、人として親として育ててもらっています。
 このように、仕事でも私生活でも、私はさまざまな経験をさせてもらっています。当然このような経験ができるのは、私独りの力ではありません。
 私は、職場と職場の仲間に、女性として私自身が健康に生まれてきたことに、女性の立場で同じ女性の気持ちになり同じ目線で病気と向き合えることに、私が医師として母として仕事ができ家族と暮らせることに、そして私の家族に、感謝という言葉をいつも捧げながら生きていきたいと思っています。