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「あれんじ」 2011年5月7日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
高森風鎮祭

“二百十日”の風鎮め、
五穀豊穣願う夏祭り

開催日:8月17日(水)、18日(木)
開催場所:阿蘇高森神社(阿蘇郡高森町高森409)
     ほか高森町一円

南阿蘇鉄道高森駅から
徒歩約10分
(問)高森町産業観光課☎0967(62)1111

町方の商人が農家の人々に感謝

 宝暦2年(1752)年、町方の商人たちが農家の人々に感謝し、五穀豊穣を祈願するために始まったといわれる「高森風鎮祭」。立春から数え、二百十日を過ぎる8月17日、18日
に行われます。
 ちょうどこのころは、イネが白い花を咲かせる時季にあたり、稲の生育にとって大切な時期です。強い風が吹くと花粉が散り、実りが悪くなると言われることから、風を鎮め、豊作を願おうという人々の思いが込められているようです。


1日で作り上げる造り物 時代とともに小型化へ

 祭りの中心となるのは、町内の若者で組織された「向上会」。この組織は大正15 年、祭りの企画・運営に携わり、町の向上に力を注ぎたいという各集落の若者が集まり結成されたのが始まりです。今でもこの名は残り、祭りを盛り上げ町の発展に寄与しています。
 「風鎮祭」の見どころは、「山引き」と呼ばれる約20基の造り物です。以前は山車を引いていたことから、こう呼ばれるようになったそうです。いろんな地域に、呼び物として造り物をつくる夏祭りがありますが、ここの特徴は、どこの家庭にもあるほうきやたわしなどの日用雑貨や台所用品を使い、わずか1日で作り上げるところです。
 17日午前零時の爆竹を合図に、町の若者が町内ごとに作り物の制作に入ります。ひと昔前は、どの組よりも大型のものを作ることに力を注ぎ、男たちが完成した造り物を引きながら町を練り歩いていたそうです。
 しかし大正期に入ると、電線が高さを制限し、道の狭さが離合の妨げとなり次第に小型化。近年では、山車を引くこともなくなり、トラックの荷台などに乗せられ移動。時代の移り変わりとともに、祭りも少しずつスタイルを変えてきたようです。


【教えてください】 「“山車”と“にわか”の共演」

 1日でつくりあげる山車(造り物)とあわせ、祭りの呼び物となっているのが漫才仕立ての「高森にわか」です。造り物も即席で作りあげますが、移動舞台で繰り広げられる漫才仕立てのにわかも即興性がおもしろく、これを楽しみに訪れる人もいるようです。
 ひと昔前までは、祭りににわかはつきものだったのですが、今ではその姿が消えつつあり、「にわか」と「山車(造り物)」が共に残っている伝統的な祭りは、珍しいかもしれません。(談)

熊本大学60年史編纂室長(前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏