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「あれんじ」 2011年4月2日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第十三回】 子育て中の 女性へのエール

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第十三回】

【第十三回】 子育て中の 女性へのエール
健康保険八代総合病院 
内科・総合内科
総合内科部長
吉岡 律子

 執筆のお話をいただいた理由が、「子育てを終わって復帰した女医さんがいる」→「育児のために仕事を一時リタイアしている女性たちの励みになるのではないか」なのだそうです。
 多くの女性にとって「結婚・出産」は大きな喜びである一方、仕事をどうするのか選択を迫られることになります。どちらを選択するにしろ、人生を楽しく生きるためには、それにより失ったものや不利な面は極力見ないようにし、得たもの・有利な面に感謝してそれを最大限に活用することだと思います。
 私の場合、仕事は夕方できちんと終わる検診に変わりましたが、豊富な疫学データの解析を、子どもを寝かしつけた後に在宅ですることができました。取り残されたと感じた時は、自分1人のキャリアを失うデメリットよりも3人の屈強な若者を社会に送り出すメリットは大きいと考えました。ありがたいことに、先輩方のご好意で週1回日赤病院で研修をさせてもらい、末子の大学入学を機に臨床復帰することができました。
 育児中の女性への支援は数あるけれど、彼女らが一番欲しいのはスキルを得るための研修の場と子育て後に復帰する仕事の場なのだろうと思います。
 現在、消化器と呼吸器を担当していますが、消化器がんは多少進行していても外科的処置が可能なものが多いのに対し、肺がんは手術ができるのは未だに少数です。原則告知していますが、その方たちの覚悟や残された人生の設計などを聞くと胸がつまります。何人もの大切な人を見送って初めて、「子育て中だから」とやっていた検診や予防医学がいかに大事なものだったのか思い知らされています。