【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
46億年のドラマに迫る! 化学がひもとく地球史
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第11回のテーマは「同位体地球化学」。ちょっと難しそうですが、きっと「なるほど!」が待っていますよ。 |
【はじめの1歩】 |
「同位体地球化学」とは、化学的な手法を用いて地球のことを研究する分野だそうです。元素の同位体を分析して地質を調べるなんて、「ずいぶん地味な学問だな」という取材前の印象ですが、さて一体どんなワクワクに出会えるのでしょうか? |
Point1 全地球凍結事件(約23億年前・6億年前) |
地球は青い星だと言われますが、46億年の地球史の中で少なくとも2回は、白い氷の星になったことがあると考えられています。1回目は約23億年前、2回目は約6億年前で、いずれも赤道付近の海まで凍るほどでした。 |
Point2 古生代末の生物大絶滅事件(約2億6500万年前) |
多細胞生物が登場したエディアカラ期の後、約5億5000万年前のカンブリア紀から、急激に生物が多様化して大型の化石が見つかるようになります。「カンブリア爆発」とも呼ばれるこの時期から現代までを、地質学上大きく区分して「顕生代」と言います。 |
Point3 長期にわたる海洋酸素欠乏事件 |
古生代末の生物史上最大の大量絶滅が起きた時期に、2000万年間もの長い期間にわたって海水中には酸素がほとんどない状態だったことが分かっています。これは、大規模な火山活動による暗黒化で、植物プランクトンの光合成が行われなくなったために起きたと考えられます。 |
Point4 「超大陸パンゲア」と「スーパープルーム」 |
地球上の大陸は、約5億年のサイクルで集まったり分かれたりを繰り返しているといわれます。古生代末の生物大絶滅当時、大陸は一つでした。「超大陸パンゲア」と呼ばれています。そして、陸が一つですから海も一つ。当時の超大洋がパンサラッサです。 |
【メモ1】 同位体とは? |
原子番号は同じでも、中性子の数が違うために質量数が異なるもの同士を「同位体」といいます。 |
【メモ2】 地球の年齢はどうやって分かったの? |
地球誕生以来、マグマ活動や地表への堆積などのさまざまな地質活動のため、誕生当時の古い石は残っていません。調べる岩石がないのに、どうやって地球の年齢は分かったのでしょうか? |
【メモ3】 地球は生きている(プレート移動) |
地球内部のマントル層は流動的で、ゆっくりとした対流が起こっています。そのため、地殻と上部マントル最上層の厚さ約100kmの岩石層は、約10枚の岩板(プレート)として、対流の動きに乗ってそれぞれに動いているのです。このマントル対流によるプレート移動は、地球上の大陸が集合・分裂を繰り返す原因ともなっています。 |
熊本大学大学院自然科学研究科
(理学専攻)地球環境科学講座 可児(かに)智美 助教 元素の同位体って『化学的な化石』とも言えるんです! |