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「すぱいす」 2026年7月号

【元気の処方箋】
正しく知りたい 緊急避妊薬と経口妊娠中絶薬

緊急避妊薬が今年2月から処方箋なしで薬局・ドラッグストアで購入できるようになりました。また、2023年4月には経口妊娠中絶薬が国内承認されました。それぞれの概要や使用方法などを、伊井レディースクリニックの伊井小百合院長に聞きました。

(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

話を聞いたのは
日本専門医機構認定産婦人科専門医

伊井レディースクリニック 院長
伊井 小百合さん



緊急避妊薬について 緊急避妊薬とはどんな薬?

緊急避妊薬は、避妊しなかった、コンドームが破損・脱落した、暴力による性交―といったことによる希望しない妊娠を防ぐために、緊急避難として使う薬です。性交後72時間以内のなるべく早くに服用することで、約8割の妊娠を防げると報告されています。

「アフターピル」とも呼ばれ、海外の多くの国では市販の薬ですが、日本では医師の診察と処方箋が必要でした。しかし今年2月、条件を満たした一部の薬局・ドラッグストアであれば、処方箋がなくても(つまり、医療機関を受診しなくても)購入できるようになりました。

ただし、誰でもすぐに買えるわけではなく、購入するには要件や守るべき手順などがあります。


購入・服用するにはどうすればいい?ー販売店舗を調べ事前連絡 薬剤師の面前で服用します

緊急避妊薬は、研修を受けた薬剤師が在籍し、産婦人科医と連携しているなどの要件を満たす店舗でしか購入できません。県内では6月16日現在50店舗、うち熊本市には28店舗がありますが、多くは事前連絡を必要としています。

熊本県薬剤師会のウェブサイトにて県内で購入できる店舗の連絡先や対応時間などを確認できます。

熊本県薬剤師会のウェブサイトへ

店舗には服用する本人が行き、問診に当たる「確認チェックシート」を記入。薬剤師がシートを確認し、販売可能と判断すれば、薬剤師の目の前で服用する―という流れになります。購入費用は7000円前後です。

服用3週間後に妊娠検査薬(薬局やドラッグストアで購入)で妊娠の有無を確認し、陽性だった場合は妊娠の可能性があるため医療機関を受診しましょう。


気を付けることは?ー確認シートに正しく記載 あくまで「緊急」用の認識を

現時点で妊娠している、肝臓などに重い病気がある―などの場合は服用できません。確認チェックシートに正しく記載しましょう。

アフターピルといわれますが、この薬はあくまで「緊急」に使われる薬です。「避妊に失敗した時に備えあらかじめ持っておきたい」という希望には応えられません。ホルモン剤ですから、性交のたびに頻回に服用することは危険です。出産する意思がない女性の避妊には、毎日服用する経口避妊薬(ピル)が確実です。

緊急避妊薬は、これまで通り産婦人科を受診して処方してもらう選択肢もあります。性感染症の心配など医師に相談したい人は医療機関へ、少しでも早く手に入れたい人は薬局へ、など自分に合った方法を選ぶとよいでしょう。

ただし、通常のピルも緊急避妊薬も、性感染症の予防や治療はできないことを忘れてはいけません。


服薬による人工妊娠中絶について:人工妊娠中絶が飲み薬でできるのですか?

異なる2種の薬を順番に服用 妊娠中断し、子宮の内容物を排出します。

従来の手術に加え、2023年から飲み薬(経口中絶薬)による人工妊娠中絶が可能になりました。

対象となるのは、 妊娠9週0日以下(妊娠前の最後の月経開始日から数えて9週間以下)で、子宮内妊娠が確認された人です。妊娠9週0日までに、妊娠の継続を中断させる1剤目を服用、その36〜48時間後に2剤目を服用して、子宮の収縮によって内容物を排出させます。

人工妊娠中絶の選択肢が広がったわけですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。経口中絶薬のメリットは、

麻酔をかける必要がなく、麻酔や手術による合併症などの心配がない
器具を子宮内に入れる操作がないため子宮を傷つけない
―ことが挙げられます。

一方で、服用後に強い腹痛、吐き気や嘔吐(おうと)などの症状が出る場合もあります。本人が希望し、医師が判断すれば、入院せずに帰宅することもできますが、通常の月経血を超える量の出血などに驚く人もいると思います。また、薬だけでは子宮内に一部が残ることもあるため、手術が必要になることがまれにあります。

経口薬を使用した中絶を行っている医療機関は限られていますので、希望する際は受診機関に確認してください。


伊井先生からのメッセージ:人工妊娠中絶が多い熊本県 市販薬を含めた取り組みを

熊本県は、全国の中でも人工妊娠中絶が多く、ワースト5の常連です。また、30代40代で中絶する人が多いのも熊本の特徴です。熊本県子ども未来課が2010年から高校で実施している「思春期保健教育講演会」や、産婦人科医や助産師・保健師が中学校の要望に応じて行っている妊娠・避妊に関する講話などによって、若い世代には新しい情報が入っています。対して、30代以上の世代の中には、避妊の知識や認識が更新されていない人もいるかもしれません。

緊急避妊薬が市販されることは、予期せぬ妊娠を防ぐとともに、人工妊娠中絶を減らすことにもつながります。その後の月経(生理)周期や妊娠に悪影響を及ぼすこともないと考えられています。

予期せぬ妊娠は、レイプやDVなど女性の側では防ぎきれないこともあります。性や年齢を問わず、さまざまな対象への教育や啓発など、社会での一体的な取り組みが必要だと思います。


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