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「すぱいす」 2026年3月号

【元気の処方箋】
理解することが支援の第一歩 自閉スペクトラム症

4月2日は「世界自閉症啓発デー」です。日本では、自閉症だけではなく、発達障害と併せて理解を深めてもらおうと、4月2日〜8日を「発達障害啓発週間」としています。そこで今回は「自閉スペクトラム症」について、その特性と、捉え方や支援の在り方などを紹介します。

(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

話を聞いたのは
独立行政法人国立病院機構菊池病院
児童精神科 医師
田中 恭子さん

日本精神神経学会専門医・指導医
日本小児科学会専門医・指導医
子どものこころ専門医・指導医
日本児童青年精神医学会認定医
精神保健指定医


【はじめに】「連続体」を意味するスペクトラム

自閉症にはいくつかの特性がありますが、その現れ方は多様で、連続的に幅広い状態像を示します。支援を行う上で、自閉症の特性を持つ人たちを包括的に捉えようと、「連続体」という意味の「スペクトラム」を用いて「自閉スペクトラム症」と言うようになりました。つまり自閉スペクトラム症は、自閉症の特性を持つ人たち全体を指します。

多様ではあるが共通する特性を持つ人たちを全体として支援していこうという考え方に立つものです。


【自閉スペクトラム症の特性】他者との関係や興味・関心の持ち方に特有の得手不得手

自閉スペクトラム症の特性として「社会的コミュニケーション」「興味・関心の持ち方」に、特有の得意なことや苦手なことが見られます。

しかし、それらの特性の現れ方は、併存する障害や疾患、環境や年齢などによってさまざまです。


社会的コミュニケーション

自閉スペクトラム症の人は他者と相互的な関係を築くことや、言葉などを用いて意思をやりとりすることが苦手です。同世代集団になじみにくく集団活動中に異なる行動をしたり、社会の常識や暗黙の了解に気付きにくかったりします。

理解できる・話せる言葉のレベルも個人差があり、全く話せない人から流ちょうに話せる人までいます。いずれにしても他者の意図を理解したり、自分の気持ちを適切に伝えたりすることに難しさがあります。


興味・関心の持ち方

特定の物や同じやり方にこだわったり、パターンを繰り返したりすることを好みます。臨機応変で柔軟な対応が苦手です。

同じ場所をぐるぐる回る、ぴょんぴょん飛ぶなどの同じ行動を繰り返すこともあります。特定の音を怖がる、匂いに敏感など、感覚刺激に対し特異的反応を示す人も多くいます。

これらの特性は裏を返せば強みになります。真面目でうそをつかない、周囲に流されずわが道を行く、決められたことは律儀に守る、興味のあることを突き詰める―などです。


【診断・支援】一人一人で異なる特性 診断は生きる上での指針に

自閉スペクトラム症の特性は、生まれながらに持っている脳の働き方に由来しています。「どれくらい特性があるか」「どれくらい特性が生活に影響しているか」は一人一人違います。

医療機関では発達歴、診察時の様子、検査結果などから総合的に診断を行います。診断は“レッテル”ではなく、生きていく上で大切な鍵を手に入れることです。「大海原を航海するための羅針盤」と考えてほしいと思います。少数派で生きづらさを抱えやすい自閉スペクトラム症の人たちの支援の指針を示す手掛かりとなります。


視覚的情報を活用

自閉スペクトラム症の人たちに「みんなと同じ」「普通」を求めることは、ストレスになります。特有の強みや学習スタイルに合わせた支援が有効です。

多くの自閉スペクトラム症の人は目に見える情報の理解が得意なので、絵や写真などの視覚的情報を活用する、一日の見通しが立つようにスケジュールを前もって知らせる、刺激が調整された穏やかな環境を作る、などのことを心掛けます。


二次的な問題も

自閉スペクトラム症の人たちは不安やストレスを感じやすく、その他の発達障害や別の疾患、精神的問題を持つことがあります。それらが積み重なると心身の不調につながります。

配慮や環境調整を行っても改善しない不調や行動面の問題が見られる場合は、医療的なケアが必要になる場合もあります。医療機関とも上手につきあっていきましょう。

自閉スペクトラム症は、親の育て方や愛情不足によって生じるものではありません。自閉スペクトラム症の正しい理解が、本人だけでなく家族への支援の第一歩になります。


【相談】各種機関が困りごとに対応「一人で悩み、孤立しないで」

生活面や発達面で気になることがあれば、乳幼児期なら健診の機会を利用したり、保健センターで相談しましょう。就学後は学校の担任の先生やスクールカウンセラーなどに相談できます。子どもが社会的スキルや基本生活習慣を学ぶための療育の場として、就学前は「児童発達支援」、就学後は「放課後等デイサービス事業所」もあります。学校卒業後は、生活や就労などの困りごとの内容に応じた相談機関を利用しましょう。相談先が分からない場合は、発達障がい者支援センター(下MEMO)に尋ねるとよいでしょう。

ご本人もご家族も、一人で悩んだり孤立したりしないよう、一緒に考えてくれる相手や場所を見つけることが大事です。


[MEMO]相談・支援の窓口

県内には3カ所の発達障がい者支援センターがあります。
相談窓口として年齢や診断の有無によらず、どなたでも利用できます。

➀熊本県北部発達障がい者支援センター わっふる
096-293-8189
わっふるへ

➁熊本県南部発達障がい者支援センター わるつ
0965-62-8839
わるつへ

➂熊本市発達障がい者支援センター みなわ
096-366-1919
みなわへ
保護者や家族の支援を行っている団体もあります。

C熊本県自閉スペクトラム症協会
090-3320-5774
熊本県自閉スペクトラム症協会へ