【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
「ブラックホール」はなぞだらけ
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第9回のテーマは「ブラックホール」。さあ、「なるほど!」の旅をご一緒に…。 |
はじめの一歩 |
SF小説に出てくる「ブラックホール」は、宇宙を超光速移動(ワープ)するための入り口として描かれることが多いのですが、宇宙物理学から見たブラックホールは、おそらく全く違うものなのでしょう。それでも、この言葉を耳や目にするたびに、なんだかワクワクしてきます。そのブラックホールを研究している教授にお目にかかれる!…と、心をときめかせながら研究室のドアを叩きました。 |
Point1 ブラックホールとは? |
ブラックホールを語るには、まず重力についての知識が必要なようです。「地球上では放り投げた物は引力によって落ちてきますね。では、なぜ月は落ちてこないのでしょうか?」と、熊本大学大学院自然学研究科の荒井賢三教授は、質問を投げかけてきました。 |
Point2 1つの銀河が複数に見える「重力レンズ効果」 |
銀河団に見られる「重力レンズ効果」。天体の光が円弧型に広がったアーク像が数多く見える
ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論で説明ができます。ニュートンの時代には「光は直進する」のが常識でした。でもアインシュタインは「重力の影響を受けると、進み方が変わってくるのではないか」と考えました。 |
【メモ1】カーナビの原理には、相対性理論が組み込まれている |
相対性理論によると、高速で移動している乗り物の時計は、遅い速度で移動する(あるいは停まっている)乗り物の時計よりも、進み方が遅いことが知られています。この現象は、浦島太郎になぞらえて「ウラシマ効果」と呼ばれています。また、重力が強いところにいるほうが時計の進み方が遅くなります。 |
Point3 「降着円盤」ってどんな円盤? |
ブラックホールは、太陽の質量の20倍以上の大きな星が進化して、約1000万年の寿命を終えて超新星爆発を起こし、外側のガスを吹き飛ばしてコア(中心)部分が重力崩壊してつくられます。では、光が外に出られないブラックホールを、どうやって観測すればよいのでしょうか? |
【メモ2】宇宙について分かっているのは、たった4%? |
ビッグバン時に生じて飛び散ったさまざまな物質が、今も星間を漂っており、それらには宇宙の歴史が刻まれています。その解析から、宇宙137億年の歴史は、ビッグバンが起きて1/100秒以降はほとんどが分かったと考えられていました。 |
Point4 「水メーザー」でブラックホール発見! |
私たちの銀河系は、約1000億個の星と多量のガスからできています。ブラックホールもたくさんあり、特に中心領域には大質量のものがあると推測されています。というのは、中心領域の周囲を楕円を描いて回る星が観測されているからです。 |
【メモ3】宇宙は回る |
地球は自転しながら太陽の周りを公転し、太陽系は私たちの銀河系の中で巨大ブラックホールを中心に回転し、この銀河系はお隣のアンドロメダ銀河と引き合って秒速50キロで距離を縮めています。これらは、さらに数十個の銀河が集まって局部銀河群を作り、乙女座銀河団に引っ張られているそうです。しかも、大宇宙は加速度的に膨張し続けているのです。私たちがそのスピードに気付かないのは、完成のおかげなのです。 |
【なるほど!】 |
ブラックホールを始め、ダーク・マター、ダーク・エネルギーの研究も、まだ端緒についたばかりなんですね。言ってみれば現代は、宇宙研究の大航海時代の夜明けなのでしょう。その最先端を行く荒井先生、日本のコロンブスになってくださいね。 |
ナビゲーターは |
熊本大学大学院自然科学研究科(理学専攻)物理科学講座荒井賢三教授
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