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「すぱいす」 2024年12月20日号

【家族の心配・不安に応えるQ&A】
子育て応援クリニック

今回のテーマ
おたふくかぜ

多くは軽い症状だが合併症に注意が必要。予防接種(任意)の検討を

熊本大学病院
新生児学寄附講座
特任教授
松本 志郎さん


Q 感染経路や気を付けるべきことを教えてください。

ムンプスウイルスによる感染症
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎またはムンプス)は、ムンプスウイルスによる感染症です。唾液中に排出されるムンプスウイルスへの接触や、咳などの飛沫による感染で、人から人にうつります。
 2〜 3週間の潜伏期の後に耳下腺が腫れてきます。発熱は起こることも、起こらないこともあります。多くは軽い症状で治りますが、合併症に注意が必要です。
 最もよく見られる合併症は髄膜炎です。おたふくかぜで子どもが入院する原因の1位ですが、安静にしておけばほとんどは治ります。その他、難聴(ムンプス難聴)、精巣炎、卵巣炎、甲状腺炎、膵炎、脳炎があり、年齢が上がるほど合併率も重症度も高くなることが知られています。

難聴や脳炎など重い合併症も

 難聴はかなり重度です。子どもでは発見しにくく、治療が難しい合併症です。2015〜16年にかけての国内調査では348人の報告があり、実際にはもっと多いと推測されています。脳炎は年間5〜30人ほどの発生が報告され、重度の後遺症や亡くなる場合があります。
 おたふくかぜには治療薬がないため、予防が大事です。ムンプスワクチンによる予防接種がありますが、日本では定期接種ではなく任意接種です。ムンプスワクチンが定期接種になっていないのは、先進国(ヨーロッパ全域、北米、南米、オーストラリア、中国、韓国、台湾、ロシア)では日本だけ。世界的には定期接種にすべきワクチンと考えられています。
 子どもだけでなく、大人も合併症が強い病気です。妊婦さんがかかると流産が増える報告もあります。この機会に家族でワクチンについて考え、家族での予防接種を検討しましょう。