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「すぱいす」 2024年7月26日号

【元気の処方箋】
決して「他人ごと」ではない性感染症

話題にしづらく、正しい情報に触れる機会が少ない
「性感染症」。知識不足から感染しても受診せず、感染
を広げる場合もあります。今回は、「自分ごと」として
捉えてほしい性感染症についてお伝えします。

性感染症を知ろう Q「 性感染症」はどんな病気?

A 性感染症は、性的接触により感染する可能性がある感染症のことを言います。性行やキス、ペッティングなどでも粘膜と粘膜、肌と肌が直接触れる状況で、どちらかが病気を引き起こす細菌やウイルス、原虫、真菌などに感染していると、相手にうつす恐れがあります。1回の接触でも感染することがあります。性器、口腔、肛門、皮膚などが感染の入り口になります(図1)。
梅毒、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、HIV(エイズ)などさまざまな感染症があります。


Q 自覚症状はありますか?

A 潜伏期間、症状はそれぞれ
感染に気付かない場合も
感染症によって潜伏期間や症状が異なります。症状が出るまでの時間が長い、目立った症状がない、といったものもあります。
尖圭コンジローマの潜伏期間は数週間から数カ月。この間にさらに感染を広げることがあります。
淋菌感染症では3〜10日の潜伏期間後、男性には激しい排尿病、膿が出るといった顕著な症状があります。一方女性には症状があまりないことが多く、相手から知らされないと分からない場合があります。
性感染症の多くは、潜伏期間や症状の乏しさから自覚しないまま感染を広げる恐れがあります。


Q感染が疑われるときは?

性感染症は治療しなければ自然に治ることはありません。必ず受診しましょう。受診先は、泌尿器科や産婦人科、皮膚科などです。ほとんどの性感染症は、医師の指示のもとできちんとした治療を受ければ治ります。セックスパートナーも同時に治療を受けることが大事です。
女性が性器クラミジア感染症を放置すると不妊の原因や、妊娠中だと早期流産になることがあります。受診をためらわないでください。


急増している梅毒 Q熊本県内の状況は?

全国的に増える中、急増している熊本
梅毒は1960年代に流行しましたが、治療薬(ペニシリン)の普及によって感染拡大が抑えられていました。それが2010年代になって全国的に再び増加し始め、熊本県健康危機管理課がまとめたデータによると、県内では17年から急増していることが分かります(図2)。全国的な増加傾向の中でも熊本は特に増加が顕著で、男性は20〜50代、女性は20代で多く報告されています(図3)。


Q治療の方法は?

A薬で完治します。早めに検査、治療を
梅毒は薬(ペニシリン系などの抗菌薬)を内服、または1〜3回注射するだけで完治します。検査を受け、治療することが自分のためにも、感染を広げないためにも重要です。
感染を防ぐには@不特定多数の人と性交渉をしないAコンドームを使用する―などが大切です。ただしコンドームで覆われない部分から感染する場合があるため、コンドームの使用で完全に予防できるわけではありません。皮膚や粘膜に異常があった場合は性的な接触を控え、早めに受診しましょう。


Q梅毒の典型的な症状は?

A症状が時間経過と共に変化
治療しない限り残る病原体
梅毒トレポネーマという細菌が性的接触によって感染し、
時間の経過と共に次のような症状が現れます。
第1期(感染後1カ月前後)
●感染部分(性器、口、肛門など)にしこりやただれ、潰瘍のよ
うなものができる。
●股の付け根部分のリンパ節が腫れることもある。
※痛みはなく、放置していても1カ月ほどで症状が消えることがある。 
 治ったかのように感じるが、治療しなければ進行する。
第2期(感染後1〜3カ月)
●手のひら、足の裏、体幹部などに「バラ疹」
と呼ばれる淡い赤い色の発疹が出る。
※数週間で消えたり、再発を繰り返したりするこ
 とも。発疹が消えても、治療しない限り病原体は体内に残っている。
第3期(感染後数年)
●皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍ができる。
●脳、心臓、血管などに病変が起こる。
※比較的早期から治療を開始する現在では、第3期に至ることはまれ。
 しかし、治療せず放置し続けると命に関わることがある。


注意! 母子感染による 「先天梅毒」

梅毒に感染している女性が妊娠、あるいは妊娠中に感染した場合、胎盤や産道を通して胎児が毒に感染する「先天梅毒」が起きる恐れがあります。流産や死産、生まれた後に難聴や視覚障害、知的障害などが見られることがあります。
 多くの自治体で妊婦健診の初期に梅毒検査が行われていますが、妊娠や結婚の前に調べておくと、より安心です。